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2019 年度 実績報告書

環化付加反応を触媒する酵素と基質のリデザインによる非天然型機能性分子の創製

公募研究

研究領域生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学
研究課題/領域番号 19H04665
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

加藤 直樹  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90442946)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード天然物生合成 / [4+2]環化付加反応 / デカリン / 糸状菌 / デカリン合成酵素
研究実績の概要

不斉中心に富んだ複雑な骨格は天然物の最たる特徴であり、不斉中心の立体配置はその生物活性と密接に関係している。天然物の生合成経路における不斉中心の立体制御メカニズムを解明し、自在に操ることが出来れば、非天然型骨格を有する新規機能性分子の創製が可能となる。本研究課題では、Fsa2ファミリーデカリン合成酵素に特徴的な反応の立体選択性の理解とそれに基づく非天然型骨格を有する天然物誘創製を目指した。
本年度は、Fsa2とそのホモログであるPhm7についてX線結晶構造解析を行い、リガンド非結合型の結晶構造をそれぞれ1.9および2.2Åの分解能で決定した。両酵素の全体構造は類似しており、リポカリン様フォールドを含むβストランドに富んだ構造で、2つのドメインから構成されていた。予想基質とのドッキングシミュレーションと、それに基づいた部位特異的変異実験を行うことで、基質との相互作用に関与するアミノ酸残基の探索に着手した。また、エキセチン類縁化合物生産菌の中から、cisデカリンを有する化合物の生産菌を複数取得した。それらのゲノム解読を行うことで生合成遺伝子クラスターの候補を見出した。クラスターに含まれていたfsa2ホモログについてノックアウト実験による機能検証を行うとともに、結晶化に向けた組み換えタンパク質の大腸菌発現、精製に取り組んだ。
さらには、変異酵素の評価に必要なin vitroアッセイ系の構築に着手した。合成基質アナログを用いた反応をテストすると同時に、細胞抽出液を用いたアッセイ系の構築も試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. デカリン合成酵素のX線結晶構造解析
エキセチン類縁化合物生産菌の探索を行い、cisデカリン化合物であるピロリジラクトンおよびPF1052の生産菌を見出した。そのゲノム解読を行うことで、生合成遺伝子クラスターの候補を取得した。PF1052生産菌については、遺伝子クラスターに含まれるfsa2ホモログの機能同定のため、ノックアウト実験を行った。遺伝子欠失株において新たに検出されたピークの化合物取得とその構造解析に取り組んでいる。ピロリジラクトン生合成遺伝子クラスターに含まれるホモログについて、結晶化に向け大腸菌発現と精製の検討を行った。
Fsa2、およびPhm7については、大腸菌にて発現、精製したタンパク質を用いてX線結晶構造解析を行った。位相決定に利用できる相同な立体構造は存在しないため、セレノメチオニン含有組換えPhm7を調製し、位相決定に用いた。その結果、1.9Åの分解能での結晶構造の決定に成功した。Fsa2についても同様に解析を行い、その結晶構造を決定した。
2. 直鎖状ポリエン基質の設計と生合成
変異酵素の評価に必要なin vitroアッセイ系の構築に着手した。構造単純化した1,3,9-decatriene構造を有する合成基質アナログを用いた反応をテストすると同時に、デカリン合成酵素遺伝子欠失株の細胞抽出液を用いたアッセイ系の構築も試みた。
PF1052を対象に、Fsa2ホモログの関与が予想される[4+2]環化付加反応のDFT計算を実施し、触媒非存在下での反応経路、立体選択性を検討した。

今後の研究の推進方策

1. デカリン合成酵素のX線結晶構造解析
基質との相互作用に関与するアミノ酸残基を探索するため、ドッキングシミュレーションを行い、候補アミノ酸残基を選定する。Alaスキャンを行い、活性が低下するアミノ酸残基については、別のアミノ酸にも置換し、触媒における役割(立体選択性への関与)を検討する。デカリン合成酵素間での構造の比較からも、立体選択性に関与するアミノ酸残基を予想し、検証する。得られる酵素の基質結合部位の情報等を基にさらなる理論計算を行う。触媒機能や立体選択性に関与するアミノ酸残基の情報と統合することで、酵素が制御する反応メカニズムの理解を目指す
2. 直鎖状ポリエン基質の設計と生合成
基質アナログを用いたin vitro評価系にて、非天然型デカリン構造形成に成功した反応に基づき、その非天然型構造の基質をPKS-NRPSハイブリッド酵素遺伝子改変した生産菌で供給する。フォマセチンとエキセチンのPKS-NRPSハイブリッド酵素遺伝子間でドメインスワッピングを行うことで、ポリエンの伸長回数、メチル基のパターン、立体配置の改変を試みる。
3. 改変生合成経路による新規デカリン誘導体創製
フォマセチン生合成経路をモデルに、改変デカリン合成酵素と改変PKS-NRPSハイブリッド酵素を組み合わせて、構築可能な8種類すべてのデカリン構造を狙い通りに作り分ける。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Structure and biological activity of metarhizin C, a stereoisomer of BR-050 from Tolypocladium album RK17-F00072019

    • 著者名/発表者名
      1.Toshihiko Nogawa, Makoto Kawatani, Akiko Okano, Yushi Futamura, Harumi Aono, Takeshi Shimizu, Naoki Kato, Haruhisa Kikuchi, Hiroyuki Osada
    • 雑誌名

      J Antibiot

      巻: 72 ページ: 996-1000

    • DOI

      10.1038/s41429-019-0229-1

    • 査読あり
  • [学会発表] [4+2]環化付加反応を触媒するデカリン合成酵素の機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      加藤直樹
    • 学会等名
      理研シンポジウム「デカリン化合物の化学合成と生合成」
    • 招待講演
  • [学会発表] [4+2]環化付加反応を触媒する酵素による天然物の立体制御2019

    • 著者名/発表者名
      加藤直樹
    • 学会等名
      理研シンポジウム「高磁場・高感度NMR利活用促進のための天然物分野シンポジウム2019」
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      http://www.npbrt.riken.jp/index.html

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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