まず、前年度の研究において課題となった抗体とエクソソームとの反応性について検討した。前年度の研究結果から、エクソソームを溶解するために用いていた界面活性剤が抗体を不活性化することがわかった。したがって、界面活性剤を用いずにエクソソームと蛍光標識抗体を反応させる方法について検討した。エクソソームを界面活性剤により溶解させずに、蛍光標識抗体と反応させると、蛍光標識抗体は変性せずにエクソソームに結合することが明らかとなった。この結果に基づき、エクソソームを過剰の蛍光標識抗体と反応させた後に、溶液からエクソソームを除去して遊離の蛍光標識抗体を測定することで、エクソソームに結合した蛍光標識抗体量を測定できることを見出した。この方法によりエクソソーム上の目的タンパク質の量を測定することに成功した。次いで、キャピラリー上にエクソソームを捕集し、回収するために、フロー系でエクソソームを捕集するシステムを構築した。角型のキャピラリーにエクソソーム懸濁液を流し、キャピラリー表面にレーザー光を集光することで、光圧によるエクソソームの捕集を実現した。このとき、キャピラリー内壁が正電荷をもつように表面修飾し、正電荷をもつ金ナノ粒子を添加することで、捕集効率を向上させることができた。捕集したエクソソームを回収し、開発したエクソソーム計測法により測定することで、細胞培養液中のエクソソームを捕集、濃縮、回収、計測することに成功した。捕集時間を14分としたとき、濃縮倍率は正電荷をもつ金ナノ粒子を用いた場合には150倍、抗体で修飾した金ナノ粒子を用いた場合には250倍であり、迅速かつ高倍率なエクソソームの捕集と計測を実現した。
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