研究領域 | 光圧によるナノ物質操作と秩序の創生 |
研究課題/領域番号 |
19H04676
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石坂 昌司 広島大学, 理学研究科, 教授 (80311520)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光ピンセット / イオン液体 |
研究実績の概要 |
イオン液体/水界面は、異方性金ナノ粒子の合成やアミノ酸類の光学分割の反応場として応用が期待されている。光ピンセットを用いて微小液滴を空気中に浮遊させると、核発生の足場を提供する固体表面の影響を受けないため、過冷却や過飽和などの熱力学的準安定な溶液を長時間安定に保持することができる。したがって、エアロゾル液滴を化学反応の場として用いれば、ビーカーやフラスコを用いた実験では実現不可能な、熱平衡下とは異なる化学過程を進行させることができると期待される。本研究では、光ピンセットを用いて空気中に浮遊させたマイクロメートルサイズの液滴の中に、キラルイオン液体/水界面を形成し、アミノ酸のキラル結晶化へ応用することを目的とする。2019年度は、空気中において化学組成の異なる二つの水滴を同時にレーザー捕捉し、それらを光操作し融合する実験に成功した。この実験手法を用い、空気中に浮遊させたキラルイオン液体液滴と水滴を融合することにより、単一エアロゾル液滴中にキラルイオン液体/水界面を形成することが可能になると期待される。また、高速液体クロマトグラフィー装置を導入し、各種アミノ酸の光学分割を行った。高速液体クロマトグラフィーによるアミノ酸の光学分離は、キラルカラムを用いる方法と、アミノ酸のジアステレオマーを生成し逆相カラムで分離する方法が主に用いられる。本研究では、多種類のアミノ酸を一つのカラムを用いて分離することができるジアステレオマーを用いる方法を採用した。ホウ酸緩衝液中においてアミノ酸をオルトフタルアルデヒドおよびN-イソブチリル-L-システインを用いてジアステレオマーに誘導体化し、コアシェル型ODS逆層カラムを用いて、アミノ酸をD体とL体に分離し定量することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において初年度実施予定であった、ダブルビーム型レーザー捕捉法を用いた気相中における化学組成の異なる液滴の融合実験に成功した。また、高速液体クロマトグラフィー装置を導入し、各種アミノ酸の光学分割を行い、D体とL体のアミノ酸を定量することに成功した。以上より、アミノ酸の光圧によるキラル結晶化へ研究を展開する準備がおおむね整った。
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今後の研究の推進方策 |
キラルイオン液体/水界面におけるL-フェニルアラニンの光誘起結晶化の実験を行う。現在、フェニルアラニン骨格を有するキラルイオン液体の合成に着手しており、イオン液体の合成が出来次第、光誘起結晶化の実験を実施する。アミノ酸(フェニルアラニン)水溶液とキラルイオン液体の界面に、レーザー光を集光し、光圧による界面選択的な核発生を誘起する。結晶を光学顕微鏡で直接観察するとともに、界面からのレーザー光の散乱光を検出し、蛍光相関分光法を用いて、D体とL体のアミノ酸の核発生の頻度と成長速度の違いを定量的に比較する。
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