公募研究
2019年度においては、還元型酸化グラフェンの光マニピュレーションに取り組んだ。本研究では、もっとも機能性に優れるグラフェンを対象とした光マニピュレーション挙動の解明を行なった。液中にコロイドとして安定に存在するグラフェンは、グラフェンを酸化させることで得られる酸化グラフェンである。液中に分散している酸化グラフェンに対して、集光したレーザー光を照射すると普通酸化グラフェンの光破壊が生じる。レーザー光のパワーを調整し、あえてデフォーカスすることで、光還元が生じることで酸化グラフェンが還元されながら、グラフェンを光破壊することなく光の進行方向に移動させることが可能であることを明らかにした。光の進行方向に移動したグラフェンは、基板との界面において、基板と平行に配向し界面で安定にトラッピングされることを見出した。レーザー光の集光点を移動させると界面に存在しているグラフェンが、レーザ光に追随し、グラフェンの位置をマイクロメートルオーダーのスケールで自在に制御可能であった。この知見を生かして、あらかじめスピンコート法によって基板に累積させた、ニオブ酸ナノシート、チタン酸ナノシート、粘土鉱物の上に光マニピュレーションの技術を利用して、還元型酸化グラフェンをマイクロメートルのスケールで精密に積層できることを明らかにした。また、レーザー光の照射を止めてもスタッキング構造が変化しないことがわかった。このように、光マニピュレーションの技術を用いることで、グラフェンと酸化物ナノシートのヘテロな積層構造が構築出来ることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
現在までの研究で、光照射による大規模なナノシートからなる配向構造の構築と機能性ナノシートのグラフェンを光マニピュレーションすることに成功している。これらは、当初の研究の目的とした成果であり、概ね研究期間内で目的とした研究成果を挙げることができた。
実験的には、研究目的を達成できているものの、論文のパブリケーションに遅れがあるため、今後は、得られた研究成果を論文としてまとめて報告していく予定である。また、2020年度は、新型コロナウイルスの影響で、国際会議による報告がほとんど出来なかったため、得られた成果を国際会議で報告することも積極的に行なっていく予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件)
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