研究領域 | 光圧によるナノ物質操作と秩序の創生 |
研究課題/領域番号 |
19H04678
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
許 岩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90593898)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノ流体デバイス / ナノ粒子 / 光圧 / Nano-in-Nano集積化 / DNA |
研究実績の概要 |
DNAは様々な分野で研究、応用される生体ナノ物質の代表であり、その操作と秩序の創生は光圧ナノ物質領域の重要な課題である。本研究の目的は、研究代表者が開拓してきた光圧とナノ流体力学操作の融合による単一ナノ物質操作の新規方法論を、ナノ粒子を代表とする0次元ナノ物質からDNAを代表とする1次元ナノ物質へと拡張して、1分子DNAを安定的に極限まで引き伸ばすことを可能とする光圧操作及びナノ流体操作との相乗効果の解明により、従来の1分子DNA操作の限界を突破させ、1分子DNA操作の極限化と超並列という革新的な原理及びブレークスルー技術を世界に先駆けて創出することである。 令和元年度(2019年度)は、本研究の基礎となる研究項目(1)ナノ流体デバイスにおける光圧による1分子DNA操作手法の開発と(2)1分子DNAを安定的に極限まで引き伸ばす革新原理の開拓に取り組んだ。 研究代表者が確立した光圧とナノ流体操作の融合による単一ナノ粒子の操作法を1分子DNAの制御操作へと展開するためには、1分子DNAの両端とナノ粒子の結合手法の確立、1分子DNAを操るための光圧条件、1分子DNAを操るためのナノ流体操作条件の解明などの課題がある。令和元年度は主にこれらの課題の解決に力を注いた。具体的には、1分子DNA光圧操作用のナノ流体デバイスを作製した。DNA両端にナノ粒子を固定化することで、1分子DNA-ナノ粒子複合体の作製に成功した。これでナノ流体デバイスにおける1分子DNAの光圧操作を可能とした。また、ナノ流体の流速を調整しながら、光誘起力によるナノ粒子操作制御によるDNAを引き伸ばすための光圧操作パラメーターの条件を実験で明らかにし、ナノ流体デバイスにおける光圧による1分子DNA操作手法を開発した。さらに、ナノ流体デバイスにおける光圧による1分子DNA操作の引き伸ばし操作に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度(2019年度)は、研究実績の概要で述べたように、ナノ流体デバイスにおける光圧による1分子DNA操作手法の開発と1分子DNAを安定的に極限まで引き伸ばす革新原理の開拓に取り組んだ。当初の計画の通りに研究内容を実施したことにより、当初の目的はほぼ達成しているため、本研究は現在までおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度(2020年度)は、令和元年度(2019年度)に取り組んだ研究項目に残った課題を解決してナノ流体デバイスにおける光圧による1分子DNA操作の極限化を開発する。さらに、ホログラフィック光圧操作により1分子DNAの超並列操作へと展開する。具体的には、下記の研究内容に取り組む。 (1)1分子DNA両端にナノ粒子を固定化する手法を最適化し、再現性が高い1分子DNA-ナノ粒子複合体の作製手法を開発する。 (2)各実験パラメーターの検討を行い、ナノ流体デバイスにおける光圧による1分子DNAの引き伸ばす操作の能力を向上させる。 (3)空間光位相変調器 (Spatial Light Modulator, SLM)を用いて、ホログラフィック光圧操作のための光学系を設計して設置し、ホログラフィック光圧操作システムを構築する。 (4)ナノ流体デバイスにおけるホログラフィック光圧操作手法を開発し、ホログラフィック光圧操作による1分子DNAの超並列に挑戦する。 研究代表者の研究室の大学院生数名と協力のもと、研究計画を実施する。そして、ホログラフィック光圧操作では、本新学術領域の総括班評価グループ評価委員の谷田貝豊彦先生(宇都宮大学)および同大学の早崎芳夫先生のご協力をいただきながら推進していく予定である。両先生はホログラフィック光圧操作に精通している。研究代表者は令和元年度(2019年度)の研究活動で早崎芳夫先生と良好なコラボレーション関係を築いており、令和2年度(2020年度)では活発な共同研究を行うことが期待される。
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