研究領域 | 光圧によるナノ物質操作と秩序の創生 |
研究課題/領域番号 |
19H04680
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
杉浦 忠男 崇城大学, 情報学部, 教授 (60304010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光圧 / 光ピンセット / マイクロマニピュレーション / ブラウン運動 |
研究実績の概要 |
光ピンセットにおいて、捕捉した対象物の状態に応じて適切なフィードバックを行うことで、1)捕捉対象物のサイズの限界、2)対象物のブラウン運動による落下、3)光軸方向のトラップ力が小さい、4)照射強度を大きくした際の熱的なダメージ、の問題を解決できる方法を開発している。本年度は、捕捉対象物の光軸方向の動きに着目して、1)光軸方向の変位が設定範囲を逸脱した際に光強度を大きくする、2)光軸方向の変位に追随してスポット位置を光軸方向に移動させていく、の2つについて有効性を検証する実験系を構築し、効果を確認した。 まず粒子の光軸方向位置を粒子画像から求める方法を開発し、1)の光強度へのフィードバック実験では、対象物の光軸方向位置の情報を光強度へフィードバックして、直径1μm のポリスチレン粒子について通常条件では捕捉不可能な光強度でも粒子を落下させずに捕捉し続けられることを確認した。また2)の光軸方向位置の情報をスポットの光軸方向位置へフィードバックする実験では、捕捉対象物が光軸方向へ移動するのに追随して光ピンセットビームのスポット位置を光軸方向へ移動していく系を構築して実験を行い、直径1μm のポリスチレン粒子を連続してトラップして保持する時間を長くすることに成功した。さらに、本新学術領域研究内の共同研究で、極低温条件下でナノ粒子への放射圧発生について調べる実験系を構築し、ナノ粒子の光駆動実験を行い、興味深い現象を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光ピンセットでフィードバックを入れることでポテンシャルを合成できるなどの効果は予想されたが、実際に限界を超える効果を得るまでには至っていなかった。それを本年度取り組んだ光軸方向の制御によって、これまで越えられなかった限界を超えられたことは画期的と考える。また光ピンセットは生体細胞の操作に使うことが多いので、常温でかつ水中の実験が大半で、一部空気中での実験が行われる程度であった。それを極低温条件下で放射圧発生の実験の環境が整い、既に光駆動実験で興味深い現象を確認できたことも画期的と考える。全体として遅れがあったり失敗したりしている訳ではないが、当初に予定したとおりに進行しているということで、おおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
実際に限界を超える効果が確認できたことから、次はより実際に意味のある捕捉対象物のサイズの限界を超える実験やトラップが困難な条件での実験にトライしていく。ターゲットの光軸方向のトラップが小さい現象に対する限界の超越についても、トラップ力を大きくすることに拘るのではく、トラップ力が小さいことでできなかったことを実現可能にするなど、別方向からの検討も行っていく。また極低温条件下での光駆動実験についても新現象の確認と利用方法の検討など展開していく。
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