酸窒化物や酸水素化物などの複合アニオン化合物は、高温材料や絶縁体膜だけではなく、近年は燃料電池用の触媒などとしても着目されている。しかし、それらの多くは熱力学的な準安定相が多く、これまでの大気中での固相反応といった手法を用いることで合成することは困難である。熱力学的な準安定相を非大気雰囲気で合成する手法及び設計指針が求められている。 そこで本研究では、塩化物や酸化物などとナトリウムアミドを反応させることによるメタセシス反応を用いた準安定な化合物の合成とその合成反応設計指針の構築を目指した。さまざまな塩化物とナトリウムアミドを混合し、室温での混合もしくは加熱することで燃焼反応の反応開始温度を調査した。反応エンタルピーが大きい反応では、室温の混合で反応した一方で、反応エンタルピーが小さい反応においては昇温中で反応した。反応後の生成物は、窒化物および塩化ナトリウムの混合物であった。これらの結果から、反応エンタルピーが大きい反応ほど反応開始温度が小さく、反応の活性化エネルギーも小さいことが示唆された。 また、熱力学的に不安定な準安定相である複合アニオン化合物の合成指針を得るために、メタセシス反応を用いた合成反応における偽三元系の相図を提案した。これまでの第一原理計算を用いたエネルギー図では、元素からの生成エネルギーを用いていたが、本研究では出発試料である塩化物などからの生成エネルギーを用いることで、合成反応が設計できることを示した。
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