熱力学的安定相として単結晶が得られる場合でも、結晶の核生成・集合・成長・集積化の速度制御により、形態の異なる物質が得られる。なかでもアモルファス集合体は表面積が大きく、吸着や触媒材料として注目される物質群である。そこで、ポリアルミニウム水酸化物(Al13)を炭酸水素イオンと複合化し、その際に、合成溶液のpHを水酸化ナトリウムあるいはアンモニア水溶液で調整する、という簡便な手法により、各種アモルファス集合体が得た。アモルファス集合体の組成決定は困難だったが、熱重量法(TG)とガスクロマトグラフ(GC)の複合法(TG-GC)により組成を決定できた。Al13の対アニオンとして水酸化物イオンと炭酸水素イオンが存在し、走査型電子顕微鏡観察と窒素吸着等温線により、塩基性条件下で超微粒子が脱水縮合反応を経て集合することにより、200 m2/gを超える高表面積を示すことが分かった。この化合物は、有害色素であるメチルオレンジを水中から効率良く吸着除去できる(10分以内に95%を超える除去率)。結晶性試料であれば、組成-構造-機能の相関は比較的に容易に明確化できるが、アモルファス試料では簡単ではなく、様々な測定手法を駆使することにより、ようやく様子が見えてきた、例えば、この吸着機能の起源について、27Al-MASNMRスペクトルを測定したところ、Al13の分子構造内に存在する[AlO4](4配位)と[AlO6](6配位)サイトのみならず、微量の[AlO5](5配位)サイトも存在することがわかった。さらに、5配位サイトの割合が多い試料ほど、メチルオレンジの吸着除去能が高かった。この5配位サイトは上述の脱水縮合反応において生成し、配位不飽和であることから、メチルオレンジの吸着点として機能するものと考えられる。
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