研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
19H04692
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40354146)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 技術移転 / 人材育成 / フォノン計算 / 電子状態計算 |
研究実績の概要 |
アニオン置換によるフォノン物性の制御可能性が本領域での研究ハイライトの1つとなる事が、此迄の当領域との協働を通じ明らかになってきている。第一原理フォノン解析は、近年は急速に実用化が進み「現場実験家による利用」も可能となっている。本研究では、フォノン解析による大規模計算を現場実験家に身近なものとして領域内に定着させ、期間終了時には、協働先実験グループの大学院生が「自らの手」で、スパコンを利用したフォノン解析を行えるように技術移転を図る事を目的として研究を進めている。具体的には、「複合アニオン化によるフォノン凝集モードの変化(バンドラインナップ制御に関連する超周期構造の解析)」、「励起状態における格子緩和(複合アニオン化による蛍光体の温度消光特性改善)」に取り組んでいる。共著論文成果を打ち立てる事を通じ、協働先実験グループの大学院生が「自らの手」で、スパコンを利用したフォノン解析を行えるように技術移転が図られつつある。「励起状態における格子緩和解析」といった学術的挑戦性の大きい課題にも取り組みを続けている。令和元年度には、本領域主催「LOBSTER(電子状態計算パッケージ)」講習会を申請者部局スパコン利用にて北陸先端大で開催し、これに合わせて実施した。令和元年度中には「フォノン解析を用いて何ができるのか、どのような活用事例があるのか」について、領域内シンポジウムにおいて「まとまった講演機会」と「協働開拓のための議論セッション機会」を確保し、実験グループからフォノン解析の需要を掘り出して、新たな挑戦課題開拓を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前半期からの差分として、第一原理フォノン解析の技術移転を進めた。第一原理フォノン解析のための教程は、主に海外開催チュートリアルでの実績を通じて確立されてきているので、まずはパイロットケースとして、現在までによく協働が進んでいる実験グループの大学院生を対象に、研究代表者グループに招聘し技術移転を図った。令和元年度には、本領域主催「LOBSTER(電子状態計算パッケージ)」講習会を申請者部局スパコン利用にて北陸先端大で開催し、これに合わせて実施した。令和元年度中には「フォノン解析を用いて何ができるのか、どのような活用事例があるのか」について、領域内シンポジウムにおいて「まとまった講演機会」と「協働開拓のための議論セッション機会」を確保し、実験グループからフォノン解析の需要を掘り出して、新たな挑戦課題開拓を行った。学術的挑戦性のある課題として、蛍光体の温度消光に関する協働を通じて、「励起状態を記述する電子状態計算手法」を適用した協働を進めた。特に、蛍光体発光状態における格子緩和モードを特定する実験技法との共著協働案件をすすめ、学術的にもインパクトの高い成果を目指した。これらの取り組みにより、令和元年度内に6報の共著原著論文成果を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、主にフォノン解析を利用した実験グループとの協働成果について原著論文出版を進める。これまでと同様、実験グループからの大学院生の短期滞在を受け入れ、永続した協働構築に向けて、電子状態解析利用に関するチュートリアル展開を図る。「スパコンを利用できる実験グループの学生」は領域内に着実に育成されてきており、これまでの研究成果は、実験グループとの共著原著論文として公表されると共に、集中的な取り組みによって抽出・精化された教程がテキストの形で編纂され、従前の単なる密度汎関数理論の概論/応用事例テキストではなく、協働の立ち上げ方/人材配置の仕方/サーバの遠隔利用/機能的な協働ログの取り方/といった実務事項を含めた特色ある内容を盛り込んで出版が予定されている。 最終年度となる令和2年度中には、実験実務家向けの電子状態計算教程の書籍出版という形で、これまでに取り組んできた技術移転の集成を図る。前半期からの蓄積で、教員の手を借りずとも所属院生が自律的に技術移転教程を進める事ができるようになっているので、今期においては「純粋に学生間のみで建てた協働プロジェクト」も育成する。 前半期より進めてきた「実験グループへの計算科学技術移転」の総仕上げとして、最終年度に開催予定の「協働で育成した実験グループ学生の手によるチュートリアル」を令和2年度内に企画する。
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