アニオン置換によるフォノン物性の制御可能性が本領域での研究ハイライトの1つとなる事が、此迄の当領域との協働を通じ明らかになってきている。第一原理フォノン解析は、近年は急速に実用化が進み「現場実験家による利用」も可能となっている。本研究では、フォノン解析による大規模計算を現場実験家に身近なものとして領域内に定着させ、期間終了時には、協働先実験グループの大学院生が「自らの手」で、スパコンを利用したフォノン解析を行えるように技術移転を図る事を目的として研究を進めてきた。計算科学解析による、当該領域の実験グループとの協働原著論文は、採択時点での5報から、研究期間終了時点には受理済18報に至り、数多くのグループとの共同研究が現在も継続している。この間、複数の協働先研究室での実験主務学生がフォノン計算を含めた計算科学解析の実務家として育ち、自らの研究に電子状態計算を活用している。このうちの一部は更に進んで、遺伝的アルゴリズムによる結晶構造探索予測を自ら運用し活用するレベルに至っており、自らのシミュレーション予測に基づいて自ら合成を手がけるような若手人材を育成するという当初の目的が形をなしつつある。技術移転・人材育成という主題のほか、グループ内においては、フォノン解析は、データ駆動型構造探索を構成する一要素技術として十分にハイスループット化されて運用されるに至っている。期間中後半には、こうした基盤を活用し、遺伝的アルゴリズムを駆使した三元系高温超伝導水素化物の新規構造発見に関して4報、粒子群探索アルゴリズムによる高圧水素結晶の新規構造発見について1報の原著論文成果を挙げている。また、構造記述子空間の探索という広い視点からの研究展開に至り、二分木回帰を用いた探索空間中の回帰関係構築手法や、空間中の効率的ベイズ探索、疎な評価関数構造に対する強化学習法を用いた探索などに研究課題を拡げている。
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