研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
19H04698
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今中 信人 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30192503)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 固体電解質 / ハロゲン化物イオン / 希土類酸ハロゲン化物 / 塩化物イオン |
研究実績の概要 |
本研究は、希土類オキシハロゲン化物におけるハロゲン化物イオン伝導性について、詳細かつ幅広い評価を行うことにより複合アニオン効果を調べ、さらに、従来より高いイオン伝導性を示す新規なハロゲン化物イオン伝導性固体を得ることを目的としている。 2019年度は、オキシ塩化ランタン(LaOCl)に着目し、そのLa3+イオンサイトに低価数のMg2+イオンまたはCa2+イオンを部分置換することにより塩化物イオン欠陥を導入したLa0.8M0.2OCl0.8(M=Mg,Ca)について、構造の環境が塩化物イオン伝導性に与える影響の詳細を調べた。Mg2+またはCa2+の導入による塩化物イオン欠陥の形成により、母体であるLaOClと比較して、導電率は増加し、かつイオン伝導の活性化エネルギーは低下した。また、La0.8Ca0.2OCl0.8は、La0.8Mg0.2OCl0.8と比較して塩化物イオン欠陥量が同じであるにもかかわらず、高い導電率かつ低い活性化エネルギーを示した。XAFS測定より、La3+の局所構造に変化は見られなかったことから、塩化物イオン伝導経路に変化はないと考えられる。また、結晶構造解析より、塩化物イオン伝導のボトルネックとなるLa-La距離が、La0.8Ca0.2OCl0.8の方がLa0.8Mg0.2OCl0.8よりも長いことから、塩化物イオンが伝導しやすい環境になっていることがわかった。さらに、XPSおよびXANESより、塩化物イオンのイオン性はLa0.8Ca0.2OCl0.8の方がLa0.8Mg0.2OCl0.8よりも高いことから、La-Cl結合が弱く、切れやすいことがわかった。以上の結果より、La0.8Ca0.2OCl0.8は、La0.8Mg0.2OCl0.8よりもLa-La距離が長く、かつ塩化物イオンのイオン性が高いために優れたイオン伝導特性を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オキシ塩化ランタンを母体とした塩化物イオン伝導体について、構造の環境が塩化物イオン伝導性に与える影響を調べた。その結果、塩化物イオン欠陥の導入により導電率は向上し、さらに、塩化物イオン欠陥量が同じ場合は、イオン伝導のボトルネックとなる結合の長さ、および伝導イオン種のイオン性が導電率に影響することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、オキシ塩化ランタン系について、結晶構造を詳細に調べたところ、イオン伝導のボトルネックとなる箇所の結合距離、および伝導イオン種のイオン性が導電率に影響することを見出した。 2020年度はこの知見を活用し、希土類オキシハロゲン化物に数種のイオンを添加し、結晶構造を厳密に制御することにより、優れたイオン伝導性を示す新規ハロゲン化物イオン伝導性固体の創成を行う。得られた材料について、導電率測定だけでなく、伝導種の同定も行う。さらに、結晶構造解析、X線吸収微細構造解析、X線光電子分光測定、ラマン分光測定などにより、詳細な構造を調べ、添加イオンだけでなく、母体を構成するイオンである希土類イオンやハロゲン化物イオンがイオン伝導性に与える影響についても明確にする。
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