研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
19H04702
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊田 進太郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70404324)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酸窒化物 / 光触媒 / ナノシート |
研究実績の概要 |
層状酸化物の剥離によって合成できる酸化物ナノシートは、結晶性が良く、その粉末は高い比表面積をもつことから、光触媒や触媒材料として研究が行われている。その酸化物ナノシートの酸素サイトの一部が窒素で置換されたN-doped 酸化物ナノシートや酸窒化物ナノシートは新しい二次元物質として注目されている。N-doped 酸化物ナノシートと酸窒化物ナノシート違いに関する定義は難しいが、酸素サイトへの窒素置換に伴う電荷補償が酸素欠陥の生成により達成しているCsCa2Ta3O9.7N0.2などの層状化合物の剥離により得られるナノシートをN-doped 酸化物ナノシートと定義し、酸素サイトへの窒素置換に伴う電荷補償が層間へのカチオン化学種の挿入により達成しているK2Ca2Nb3O9Nなどの層状化合物の剥離により得られるナノシートを酸窒化物ナノシートと定義する。酸窒化物ナノシートはN-doped酸化物ナノシートよりも窒素の含有量が多く、酸素欠陥が少ないと期待されている。N-doped 酸化物ナノシートの合成に関しては、N-doped TiO2ナノシート、N-doped Ca2Ta3O10, N-doped Ba2Ta3O10など比較的多くの単層のN-doped 酸化物ナノシートの研究報告がある。一方、酸窒化物のナノシートの報告は殆どない。これまで酸窒化物ナノシートとして、K2Ca2Nb3O9Nの剥離による[Ca2Nb3O9N]2-ナノシートの作製報告があるが、単層剥離は達成されていない。本年度はこれらの課題に対して、ニオブを含む新しい層状窒化物の合成に成功し、そのナノシート化を検討したところ、バンドギャップが2.5eV程度のニオブを含有する酸窒化物ナノシートの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで窒素を含有する可視光応答性のナノシートとして、N-doped TiO2ナノシート、N-doped Ca2Ta3O10, N-doped Ba2Ta3O10などの酸素サイトへの窒素置換に伴う電荷補償が酸素欠陥の生成により達成している窒素ドープ酸化物ナノシートが提案されてきたが、酸素サイトへの窒素置換に伴う電荷補償が層間へのカチオン化学種の挿入により達成しているK2Ca2Nb3O9Nなどの層状化合物の剥離により得られる酸窒化物ナノシートの合成例はほんとない状況であった。その理由としては、層間に剥離剤がインターカレーションされにくいことがあげられる。本研究では、層状酸窒化物の剥離方法を検討することで、剥離する手法の開発に成功し、バンドギャップが2.5eV程度のニオブを含有する酸窒化物ナノシートの合成に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、酸窒化物ナノシートを合成する方法の開発に成功したが、剥離過程で一部、層状酸窒化物の窒素が脱離することが明らかになっている。窒素脱離が進行すると、ナノシート内部に再結合を促進させる欠陥が生成すると考えられるため、これらを抑える必要がある。また、剥離過程で有機物を含む剥離剤を使用しているが、光触媒活性評価時にこの有機物が残っていると水分解が進行しにくいという課題もある。これらの課題に対して、今年度は以下の項目を実施し、課題解決に取り組む. ①ナノシート内部から窒素が脱離することを抑制できるマイルドな剥離条件を開発する。 ②有機物質を使用しない層状酸窒化物の剥離方法を検討する。
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