研究実績の概要 |
本研究では、リチウムイオン伝導性を示す硫化物や酸化物へ窒素を添加することによって得られる様々な窒素含有複合アニオン系リチウムイオン伝導体を作製し、それらの導電率や成形性、化学安定性などの特性と構造の相関について調べることを目的としている。 本年度は、ガラスセラミックスのイオン伝導度が10-3 S/cm以上の高い値を示す70Li2S-30P2S5(Li7P3S11)組成をベースに、Li2SをLi3Nに置き換えた(70-x)Li2S-30P2S5-xLi3N (x= 0~20, mol%)の固体電解質を作製した。メカノケミカル法によって得られたガラスのイオン伝導度はLi3Nの増加に伴って増加した。x=20のガラスセラミックスにおいては、新規結晶相由来のパターンが観測された。Raman分光の結果から、この結晶相はPS4およびP2S7ユニットから構成されていることがわかった。その粉末成形体は室温で10-3 S/cm以上の高いイオン伝導度を示し、室温、相対湿度70%の大気にさらしても硫化水素の発生が少ないことから、硫化物への窒素導入によって、導電率と安定性を両立した電解質が得られた。 硫化物イオンとハロゲン化物イオンの両方を含む複合アニオン系材料の一つであるLi6PS5X (X = Cl, Br, I)は、アルジロダイト型構造をとり、結晶内に取り込まれるハロゲン種によってイオン伝導度が大きく異なることが知られている。そこで本研究では、Pよりもイオン半径が大きなSbを用いたLi6SbS5I電解質を新たに作製し、構造と特性について調べた。メカノケミカル処理後に熱処理して得られたLi6SbS5I試料はアルジロダイト構造をもち、Li3SbS4ガラスおよびガラスセラミックスよりも高い25°Cで2.1×10-6 S/cmのイオン伝導度を示すことがわかった。
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