研究領域 | 新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化 |
研究課題/領域番号 |
19H04727
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
須藤 雄気 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (10452202)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロドプシン / 光 / 生物物理 / プロトンポンプ / NPQ |
研究実績の概要 |
植物による光合成は、水と二酸化炭素から炭素固定・酸素発生・ATP産生を行う反応であある。ここで、生物のエネルギー通貨とも呼ばれるATPは、光合成タンパク質における細胞内から細胞外にプロトン(H+)の輸送により実現している。また、植物には光強度にあわせて余剰なエネルギーを熱として放出する機構(Non Photochemical Quenching:NPQ)が備わっており、効率的な光合成を実現している。これらは光合成に伴う葉緑体ルーメン側の酸性化(プロトン濃度上昇)が引き金になることがわかっているが、その制御機構の詳細は不明である。 本研究では、光合成色素クロロフィルがほとんど吸収しない緑色光で働くロドプシンを緑藻(クラミドモナス)および陸上植物(シロイヌナズナ)の葉緑体に異種発現させる組み換え体を創出する。次に、ロドプシンを光により励起し、人為的に膜を介したプロトン移動を誘起する。これにより、擬似的に強・弱光条件を作り出し、その際に起こる植物応答(ATP合成、NPQ制御、成長、形態、その他)を光で制御し、それらのメカニズムの解明を目指す。
本年度は、以下の生化学的・細胞生物学的解析を行った。 ①生化学的解析:クラミドモナスおよびシロイヌナズナにおけるロドプシンの発現を検討する。加えて、葉緑体への局在を中心に確認する。具体的には、確認用の抗体の検討および細かな実験条件の設定を行った。クラミドモナスおよびシロイヌナズナともに、ロドプシンの葉緑体への局在を示唆する結果が得られ、計画は順調に進んでいる。 ②細胞生物学的解析:NPQをはじめとした応答解析を進めた。(1)クラミドモナスについては、NPQ誘導の確認に加え、細胞形態や生育などへのロドプシンおよび光の影響を検討した。(2)シロイヌナズナについては、上記に加えレチナールの添加法の検討と、レチナールが及ぼす細胞毒性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本領域の公募研究前半2年間とあわせて、既に、多様なロドプシンの単離・同定・創成を終えた。これらを用い、クラミドモナスの緑色光によるNPQ増減制御を示唆する結果をえた。シロイヌナズナでの発現にも成功している。上記に関わる成果は、計9報の原著論文として、PNAS誌やeLife誌をはじめとした雑誌に掲載された。このように、当初の計画は予定通り(あるいはそれ以上に)順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も本年度に引き続き、緑藻(クラミドモナス)および陸上植物(シロイヌナズナ)へのロドプシンの発現と、光照射に伴う植物応答への影響を包括的に調べる。領域内共同研究にも積極的に取り組み、世界初の植物における光遺伝学(オプトジェネティクス)を実現したい。
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