研究領域 | 新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化 |
研究課題/領域番号 |
19H04728
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山崎 朋人 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 助教 (70512060)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | miRNA / クラミドモナス / 光合成 |
研究実績の概要 |
LHCSR3遺伝子の発現は強い光とプロトン勾配に依存して誘導され、光を捨てる反応が起こる。強い光を感知する経路は、青色光受容体フォトトロピン(PHOT)を起点として励起される。これまでに、PHOT 遺伝子の発現がmiRNA によって抑制され、LHCSR3 遺伝子の発現誘導に影響を与える仕組みの存在を発見した。そしてこの反応に関わるmiRNA をコードするmiRNA 遺伝子を同定した。 本研究ではこうした発見を発展させるべく、miRNA によるPHOT 遺伝子の発現抑制の変動をとらえるために、どの様な培養条件でその強度が変動し、光合成反応における光利用のバランス制御にどういった影響を与えるのかについて、野生株とmiRNA の機能しない変異体の比較解析から解明に挑戦した。 様々な培養条件下で培養した細胞を解析した結果、光独立栄養培養条件、明暗周期下(12時間:12時間)で同調培養し、概日リズムを作る条件で培養した時にその差が見えた。野生型株とmiRNA変異体を比較解析すると、自然界では曇天に相当するような弱光下の、昼間にあたる時間にPHOTタンパク量の差が最も大きくなることを突き止めた。これは、この条件下で最もmiRNAの作用が強いことを示唆している。一方で同じ条件でも夜間に当たる時間ではその差がほとんど見られなかった。さらには、晴天に相当するような強光条件で培養した場合は、PHOTタンパク質量の差は認められなかった。 LHCSR3は光を捨てる反応を司ることから、弱光下、すなわち光を捨ててはいけない条件ではmiRNAによってPHOTが抑制されることでLHCSR3の誘導が抑制され、光を捨てる反応が抑制されていることが示唆された。miRNAはこうした光防御反応の最適化に関わっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで「miRNAがPHOTを制御する仕組み」が確かに存在することを裏付けてきた。しかしなぜそのような仕組みが存在するのか、その仕組みが光合成を効率的に行うためのどのような寄与をしているのか、そういった生理的意義については不明であった。 当該年度は、miRNAの機能しない変異株と野生型株を比較解析することで、miRNAによるPHOTの発言抑制作用が強く表れる環境が明らかとなった。これはmiRNAによる抑制効果の生理的意義の解明のヒントとなる発見であり、当初予定されていた通りの進展があったと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム編集によって個別のmiRNA遺伝子を破壊した株の3回にわたる戻し交配を終えた。これらの株を相互にかけ合わせて、miRNA遺伝子の2重変異体を作製する。 こうした株を用い、これまでの研究で見いだされたmiRNAの作用強度が異なる複数の条件において、PHOTタンパク量(ウエスタン解析)、PHOT mRNA量(qRT-PCR解析)、miRNA量(ノーザン解析)、qEと光合成活性の測定を行い、どのmiRNAが、どういった条件でPHOTを制御し、その結果どのような生理的変化が起こり、光合成能力を最適化しているのかを解明する予定である。
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