公募研究
本研究では、葉緑体を中心としたオルガネラコミュニケーションに注目し、気孔制御や遺伝子発現制御における役割について解析を行った。[オルガネラと気孔制御] 気孔は病原菌の主な侵入経路となっている。植物は、病原菌が共通にもつ分子パターン(鞭毛タンパク質や細胞壁構成因子)を細胞膜受容体が認識し、気孔を閉鎖することで病原菌の感染を防御している(気孔防御)。この気孔の閉鎖には、細胞内Ca2+濃度の上昇や活性酸素種(ROS)バーストが関係すると考えられているが、長時間に渡って気孔を閉鎖する仕組みは分かっていない。本研究では、サリチル酸(SA)前駆体の葉緑体からの輸送体であるEDS5、およびSA誘導に関わる葉緑体タンパク質CASの解析から、防御応答で誘導されるSAが気孔防御における持続的な気孔閉鎖に関わることを示した。また、ミトコンドリア内膜局在の機械受容チャネルのMSL1が、光依存的な気孔開口に関係することも明らかにした。MSL1によるミトコンドリア膜電位制御が、気孔応答と関係している可能性が考えられる。[葉緑体への光シグナル伝達] 葉緑体光合成遺伝子の転写制御では、核コードのシグマ因子が重要な働きをしている。SIG5は光やストレスに応答して誘導される特異的なシグマ因子で、葉緑体psbD光応答プロモータ(LRP)活性のストレス制御に関わっている。SIG5遺伝子を核ゲノムと葉緑体ゲノムに導入した形質転換体を作成し、SIG5過剰発現体の葉緑体遺伝子発現への影響を解析した。その結果、SIG5がpsbD LRPとpsaA/Bオペロンのプロモーターを特異的に認識している可能性が示された。また、SIG5の葉緑体輸送が光で制御されている可能性も示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: 27 ページ: 168-175
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Plant Cell Physiol.
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