研究領域 | スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御 |
研究課題/領域番号 |
19H04742
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
能瀬 聡直 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 電気シナプス / 体性感覚 / 神経回路発達 / 運動回路 |
研究実績の概要 |
本研究では発生過程において運動経験の感覚フィードバックが中枢回路を再編成する過程を探る。このため、運動制御の諸要素を遺伝学的に解剖可能なショウジョウバエの胚・幼虫を用い、電気シナプスから化学シナプスへのスクラップ&ビルドに着目した研究を行うことを目的とする。以前の研究により、1)「電気シナプスを介した中枢回路の自発発火により誘導される活動」から「中枢パターン生成回路(CPG)により生み出される活動」へと移行することで運動回路は発達すること、2)この過程で電気シナプスから化学シナプスへのスクラップ&ビルドが起こること、3)体性感覚フィードバックを特異的に欠くNompC変異体においてCPGが形成されないこと、を見出していた。 本年度は体性感覚フィードバックの標的の候補として、以前のコネクトミクス解析により体性感覚フィードバックからの入力を受けることが分かっていたM/A27h回路に着目し研究を進めた。M/A27h回路は腹部の各神経分節に存在するMとA27hの2種類のニューロンから構成され、運動回路発生の初期から電気結合を介して同期活動していた。この回路内の電気シナプスの構成タンパク質としてShakBを同定し、その細胞特異的RNA干渉によりM/A27h回路の電気シナプスを阻害したところ、CPGがまったく形成されないことが分かった。このことは、このM/A27h回路の電気シナプスを介した信号伝達が運動回路の発達において中心的な役割を果たすことを示している。さらに、体性感覚フィードバックを特異的に欠くNompC変異体においては、M/A27h回路内のギャップ結合を介したカップリングが形成されないことを見出した。以上の結果は体性感覚のフィードバックがM/A27h回路内の電気シナプスの形成を制御することで、運動回路の発達を制御していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり体性感覚フィードバックが運動回路の発達を制御する回路機構を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り同定した体性感覚フィードバックの標的回路の機能をさらに詳細に調べることで、運動回路が自発活動と体性感覚フィードバックを介して自身をスクラップビルドする過程を明らかにする。
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