歌を学習するトリ、ソングバードは生後の発達期には聴く親の歌を覚え、これを摸倣することで歌を学習する。この学習臨界期は歌を聴いて覚える「感覚学習期」と「感覚運動学習期」の二つの時期から成る。本研究ではこの複雑な臨界期の中でどの様に神経回路が発達し、歌学習を行うのか明らかにする研究を行った。 2019年度末~2020年度途中までコロナウィルス感染拡大により研究室が閉鎖したため、研究の進捗が遅れていたが、2021年度途中まで研究機関を延長させて頂いたことで無事に研究を終了させることが出来た。研究代表者の沖縄科学技術大学院大学における研究室で作成された、神経活動に依存して蛍光タンパクを発現させるウィルスベクターを用いることにより、覚えた親の歌に反応する神経細胞群に蛍光タンパクを発現させ、その神経投射経路を調べたところ、高次聴覚野に覚えた親の歌に反応する神経細胞群が存在し、これらは歌学習制御する感覚運動野に歌学習期にのみ投射していることを明らかにした。また、これらの神経細胞群に細胞死を起こさせ、死滅させることで歌学習が起きないことも明らかになった。つまり、感覚学習期に親の歌を覚え、この聴覚記憶に関わる神経細胞が、運動野に感覚運動学習期に一時的に投射することで歌学習を制御している可能性が示唆された。この様に、一時的に神経回路が生成されスクラップ&ビルドされることで、異なる臨界期のタイミングが制御されていることが考えられた。 これらの研究成果は学会などで報告を行った。また論文にまとめている最中でおり、近日中に投稿される予定である。
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