公募研究
先行研究により、神経障害性疼痛アロディニアの発症において大脳皮質一次体性感覚野(S1)のアストロサイトがシナプスを作ること(ビルド)、中大脳動脈閉塞による脳卒中モデル(MCAO)において虚血梗塞巣周辺(ペナンブラ領域)でアストロサイトがシナプスを刈り込むこと(スクラップ)を見いだした。本研究は、このようなグリア細胞「アストロサイト」によるシナプスのスクラップ&ビルドのメカニズム、スイッチング、さらに行動のアウトカムとの因果関係を明らかにすることを目的としている。本年度は特に、アストロサイトによるシナプスビルドに注目して研究を遂行した。神経障害性疼痛モデルとして、坐骨神経を結紮(SNL)モデルマウスを用いた。SNLにより、S1ではアストロサイトが活性化し、一時的にシナプス再編型となった。このシナプス再編型アストロサイトは、GFAP強陽性、Ca2+興奮性亢進、シナプス新生分子thrombospondin-1(TSP1)産生、の表現型を有し、これにより無秩序なシナプス「ビルド」によりアロディニアに至っていた。これらシナプス再編型アストロサイトのトリガーの責任分子として、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)を抽出た。そこでmGluR5がこれら一連の応答の必要条件であることを明らかにする目的から、アストロサイト特異的にmGluR5を欠損させたマウスの作成に着手した。Glast-Creマウスとfloxed-Grm5マウスの交配により、脊髄アストロサイトのmGluR5にはほぼ影響せずに、S1アストロサイトmGluR5が欠損したコンディショナルノックアウトマウスを作成することが出来た。
2: おおむね順調に進展している
機器の不調、新型コロナ感染症拡大の理由により、当初の目標を超えることはできなかったが、概ね順調である。
本年度作成したアストロサイト特異的mGluR5欠損マウス(mGluR5-cKO)のバリデーションを行った後、これらを用いてmGluR5とS1アストロサイトのCa2+興奮性、TSP1産生、他のシナプス新生分子の変動、シナプス新生、ネットワーク再編、さらにアロディニアとの関連性を明らかにする。また坐骨神経結紮(SNL)後の、mGluR5発現の時間経過、程度、発現メカニズムの解析を行い、限られた時間、細胞で出現したmGluR5が、如何にして持続的な神経ネットワーク再編(ビルド)、既存のネットワーク破壊(スクラップ)、そして難治性のアロディニアを誘導するのか、に関する答えを見いだす。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 8件、 招待講演 14件) 備考 (1件)
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https://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical_basic/pharmaco/1-Japanese/home.html