公募研究
グリア細胞を介したシナプスのスクラップ&ビルドが、神経障害性疼痛アロディニアに果たす役割の解明を行った。坐骨神経を結紮(SNL)すると、大脳皮質一次体性感覚野(S1)ではアストロサイトが活性化し、一時的にシナプス再編型となる。このシナプス再編型アストロサイトは、シナプス新生分子thrombospondin-1(TSP1)を産生し、無秩序なシナプス新生を繰り返し、S1ネットワークのスクラップ&ビルドによる触覚回路と疼痛回路の誤接続により、アロディニアに至る。本年は、このシナプス再編型アストロサイトによる無秩序なシナプス新生メカニズムを解析した。シナプス新生分子TSP1発現を指標にした薬理学的なスクリーニングにより、異常なシナプス新生亢進の責任分子として代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)を抽出した。そこで、アストロサイト特異的なmGluR5欠損マウス(cKO)を作成し、S1アストロサイトのmGluR5と、シナプス新生、ネットワーク再編、さらにアロディニアとの関連性を明らかにした。SNLにより惹起されるアロディニアは数ヶ月にわたり持続するが、mGluR5の発現亢進は一過性でSNL後1週間に限られていた。この1週間で、S1アストロサイトはCa2+興奮性を亢進させ、TSP1及び複数の神経新生因子を産生し、シナプス新生を高度かつ無秩序に亢進させることで触覚回路と疼痛回路の誤接続を引き起こし、これがアロディニアの原因となっていた。cKOでは、これら一連の疼痛応答のすべてが消失していた。誤接続されたネットワークは、mGluR5がS1アストロサイトから消失した後でも維持され、これがアロディニアが難治性である原因となっていた。以上、アストロサイトは単一分子「mGluR5」のON/OFFによりアダルト神経ネットワークのスクラップ/ビルドを制御していることが明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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