研究実績の概要 |
神経細胞の軸索起始部(axon initial segment, AIS)は神経活動の生成部位であり、この分布が適切に形成・維持されることが脳神経回路の正常な動作に必要不可欠である。近年,このAIS分布の決定過程には,発達期の神経活動に依存した分布再編が関わることが分かってきた.従って、本研究では,脳幹の聴覚神経回路を対象に,このAIS分布の再編過程を聴覚入力との関連で調べることで,AISでの活動依存的構造再編の分子機構を明らかにする. 本年度は、AISの構造再編の分子機構について主に切片培養標本を用いて検討した。胚齢10-11日のニワトリから脳切片を作成し、Millicell膜上で培養、高K液刺激(7日間)によりAISの短縮を誘導した。このとき、さらに種々のCaチャネル阻害剤を培養液に加えたところ、P型Caチャネルの阻害剤であるωagatoxinの投与により短縮が阻害された。P型Caチャネルはシナプス前終末に存在することから、AISの短縮にはシナプス入力が重要だと考えられた。現在は、シナプス入力下流の細胞内シグナル経路(PKC、PKA、CaMKII、CN、MAPKなど)の阻害剤の効果についても検討中である。また、本年度は、薬理遺伝学によりシナプス後細胞の神経活動とAIS短縮との関連を調べるためのコンストラクト(PSAM 5HT3)の作成、およびCRISPR Cas9を用いたゲノム編集技術によりAIS局在タンパク質のノックアウトを行うためのコンストラクト(ankyrinG、neurofascin186、EB1など)の作成も行った。
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