本研究の目的は、大脳の長距離神経回路である脳梁神経回路をモデルに、活動依存的な回路形成機構、特に活動依存的な軸索分枝ダイナミクスを種々の神経活動操作技術とin vivo軸索タイムラプスイメージングにより明らかにすることであった。(1)時期特異的な脳梁投射細胞神経活動操作の実験系を確立した。(2)マウス大脳において脳梁軸索発達が神経活動依存的に進む生後9日から15日に、蛍光標識した1本1本の脳梁軸索をin vivo imagingする技術を確立した。(3)実験後、脳を透明化処理して、遺伝子導入側から投射側の半球に至る脳梁軸索投射をマクロイメージングする技術を確立した(投射細胞の位置と投射先の位置を、体性感覚野のバレルマップに照らし合わせて詳細に解析できるようにした)。生後9日から13日にかけて、脳梁軸索は軸索伸長と退縮、分枝形成と退縮を繰り返すことが観察された。特定の層、特定の領域(バレルの縁、中心、バレル外)の軸索動態は現在解析を進めている。バレルA~E列のどこに、どのような過程を経て脳梁投射が分布するかの解析も行っている。どの軸索分枝が残り、どの枝が縮退するかのルールが明らかになると期待できる。さらに、回路形成期の脳梁投射細胞同士が機能的サブネットワークをつくり、その同期活動によって脳梁投射が形成されるという仮説のもと、研究を進め、脳梁投射細胞同士がサブネットワークを形成していること、その同期活動を一部反映するLイベントと呼ばれる神経活動パターンが脳梁投射に深く関与することを明らかにした。また、神経活動パターンを制御するイオンチャネル分子に注目した実験を行い、活動依存的機構によって脳梁投射を障害する疾患関連分子を同定した。
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