公募研究
脳に存在するニューロン(神経細胞)の大部分は、胎生期あるいは生後の発達期に作られる。しかし、多くの動物種において、嗅覚情報を処理する嗅球では、成体でも継続的にニューロンの細胞死と再生が起こっている。以前研究代表者らは、ニューロンが細胞死を起こした場所に、同じ種類のニューロンが再生する、嗅覚入力依存的メカニズムを見出した。本研究では、この連動機構に、嗅覚刺激による血流上昇が関わっているかどうかを検証することを目的としている。本目的のため、様々な実験手法を用いて、嗅覚入力依存的なニューロンの除去と再生における血流の役割を明らかにする。2019年度は、次の研究を行った。 1) 血流とミクログリアの位置関係および貪食活性の評価:昨年度に引き続き、死んだ嗅球ニューロンのミクログリアによる貪食とその後の再生過程を、隣接する血管の微小環境とともに、生きたまま観察するための実験系の確立のための実験を行った。 2) ミクログリアによる死細胞の貪食がニューロン再生に与える影響:死細胞がミクログリアによって貪食されることは、再生過程における重要なプロセスであると考えられるが、その詳細は不明である。本年度、ミクログリアによる貪食作用を阻害して影響を解析したところ、嗅球の新生ニューロンに幾つかの変化が認められた。 3) 再生ニューロンの移動における血流の役割:脳室下帯で産生されるニューロンは嗅球内を移動して適切な場所で停止する。昨年に引き続き、この移動の最終過程におけるニューロンの移動について詳細に解析し、血流が何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
成体マウスの嗅球における細胞死とニューロン再生の関係を調べる実験が概ね順調に進んでおり、スクラップ&ビルドについての有用な情報が得られていると考えられるため。
新型コロナウイルスによる制限によって、二光子顕微鏡によるイメージングなど、長時間を要する動物実験などの実験が遅れることが懸念される。可能な範囲で動物実験を遂行するとともに、短時間で可能な実験を中心に行い、得られた成果をまとめる予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件、 招待講演 10件) 備考 (1件)
Cerebral Cortex
巻: なし ページ: bhaa031
10.1093/cercor/bhaa031
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http://k-sawamoto.com/