研究領域 | スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御 |
研究課題/領域番号 |
19H04764
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
戸島 拓郎 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (00373332)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成長円錐 / 軸索ガイダンス / 膜交通 / オルガネラ / 生細胞イメージング |
研究実績の概要 |
発生期の神経細胞が伸ばす軸索先端の成長円錐は、細胞外の軸索ガイダンス因子を感受して自らをスクラップ&ビルドすることで正しい経路選択を行う。申請者はこれまでに、「エクソサイトーシスとエンドサイトーシスによる軸索ガイダンス制御」という新概念を提唱・証明してきた。本申請課題では、申請者らが自ら開発した次世代型高速超解像顕微鏡法と新規光遺伝学ツールを駆使することで、成長円錐のスクラップ&ビルドを担う細胞内局所膜交通(membrane traffic)の動態を「精密に観て、操作する」ことでその全貌の解明に迫ることを目標としている。 平成31年度は、膜交通を任意の時空間タイミングで活性化/阻害できる様々な光遺伝学ツールの開発・改良を進めた。(1)活性化ツールについて、青色光で結合が解離するLOV2-Zdkのペアを用いたコンストラクトの試作版が完成し、暗闇条件下で積荷を小胞体にトラップすることに成功した。また、N-cadherin、TrkA、TrkB、BDNFといった神経細胞特異的に発現するタンパク質を積荷とするコンストラクトを多数作製した。(2)阻害ツールについて、光駆動性プロトンポンプをTGNに局在させるために様々な試行錯誤を行い、最終的に、プロトンポンプのC末端にTGN局在シグナル配列とER exit signal配列を付加することでTGN局在が達成された。また、ゴルジ体/TGN内腔のpHを計測するためのpHセンサーも作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、新規開発した光遺伝学ツールについてTGN局在が達成されるなど、各種プロトタイプが完成しつつある。また高速超解像顕微鏡システムが本格稼働を始めており、本格的な実験を執り行う準備が整ったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、完成した新規光遺伝学ツールを用いて下記のような実験に取り組む。(1)小胞体に一時的にトラップした積荷分子を光でリリースさせる光遺伝学ツールを発現させた成長円錐に光を照射することにより、成長円錐において翻訳された積荷の細胞内輸送過程のみを可視化・追跡する。観察には、申請者らが開発した次世代型高速超解像顕微鏡を用い、積荷輸送の精密な時空間動態を定量的に解析する。(2)TGN局在型光駆動性プロトンポンプを発現させた成長円錐に光を照射することにより、成長円錐内のTGNの機能(選別輸送など)を任意のタイミングで阻害し、成長円錐の運動性に対する影響を観察する。これによりTGNの機能と成長円錐の多彩な運動性の因果関係を明らかにしてゆく。(3)これら光遺伝学ツールを生体組織内での実験に展開し、生体組織内で断裂した軸索末端を適切な標的に再配線する技術の開発を目指す。
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