研究領域 | スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御 |
研究課題/領域番号 |
19H04765
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
七田 崇 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, プロジェクトリーダー (00598443)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 脳梗塞 / 炎症 / マクロファージ / 炎症惹起因子 |
研究実績の概要 |
脳梗塞においては、虚血壊死(スクラップ)にされた脳細胞からは内因性の炎症惹起因子が放出されて炎症を引き起こす。しかしながら、どのような内因性の組織因子が炎症を惹起するのかはまだ十分に明らかにされていない。我々は、脳抽出液中に炎症を惹起する活性を検出し、脳抽出液を分画して活性を有する画分を質量分析によって解析することにより、DJ-1(Park7)タンパク質を新たな内因性炎症惹起因子(DAMPs: danger associated molecular patterns)として同定した。DJ-1タンパク質は脳内に浸潤した免疫細胞をToll様受容体2(TLR2)とTLR4依存的に活性化することを明らかにしたが、DJ-1のアミノ酸配列のうち炎症を惹起する活性を持つ構造を検索したところ、DJ-1タンパク質のC末端にあるαG-αH helix構造がTLR2とTLR4を介して炎症を惹起する活性を有することが判明した。脳梗塞モデルマウスを用いた検討では、DJ-1タンパク質は主に虚血壊死に陥った神経細胞から細胞外に放出され、脳梗塞内に浸潤したマクロファージと細胞表面上で接触している像が多数観察された。ウサギ免疫によって作製した抗DJ-1抗体を脳梗塞モデルマウスに投与すると、脳内に浸潤した免疫細胞から産生される炎症性サイトカインの量を減少させ、脳梗塞の体積を縮小し、神経症状を改善することが判明した。以上のことから、脳梗塞において神経細胞死に伴って放出されるDJ-1タンパク質は新規のDAMPsとして機能することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において脳梗塞に伴う脳細胞の虚血壊死(スクラップ)によって炎症が惹起される分子メカニズムの詳細が明らかとなり、脳梗塞に対する新たな治療標的を決定することができている。そのため本研究計画は順調に進捗していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
脳梗塞後の神経傷害(スクラップ)によって炎症が惹起されるが、次第に炎症は収束に至り、自然な修復プログラムが開始される。現在、この神経修復に関わる分子メカニズムを解析している。実際に、神経回路が再構築(ビルド)される脳領域を同定できているため、このような神経回路の再構築を誘導する分子メカニズムを解明し、新たな脳梗塞に対する治療標的を決定する予定である。
|