研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
19H04768
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
荻沼 政之 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (50825966)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 代謝 / 分子時計 / ゼブラフィッシュ / ターコイズキリフィッシュ / イメージング |
研究実績の概要 |
生物は遺伝子の発現振動が作る周期の長さを指標として、様々な生命活動の時間を正確に調節する。例えば、転写抑制遺伝子である Hairy遺伝子は、自身の遺伝子発現を抑制することで分子時計と呼ばれる発現振動を作り、この周期性を利用して胚発生の体節形成や神経分化のタイミングを制御する。分子時計の周期長は、発生過程においても、また種間でも異なっており、その差 を利用し発生現象に要する時間を調節する。つまり、分子時計の振動周期の長さを規定する分子基盤は胚発生の時間制御機構を理解する上で最も重要な課題であるが不明な点が多い。一方で、申請者は最近、エネルギー代謝経路の観点から体節形成過程を研究した結果、エネルギー代謝経路であるミトコンドリア活性を阻害すると他の発生過程には影響を与えずに、分子時計形成が特異的に阻害されることから「エネルギー代謝経路が、分子時計の周期長を制御する主要構成因子である」という作業仮説を立てた。 本研究はこの仮説を証明するために、タイムラプスイメージング技術に最適なゼブラフィッシュ胚を用いてエネルギー代謝経路の代謝物と分子時計の両者を可視化・定量できるシステムを構築し、エネルギー代謝経路による分子時計の周期長制御に関する分子基盤を明らかにする。さらに申請者は分子時計の周期長が異なるゼブラフィッシュ胚(周期長30分)とターコイズキリフィッシュ胚(同2時間)に注目し、分子時計と代謝活性を比較・定量することで、周期の長さを規定している主要因子を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(計画1)ゼブラフィッシュ胚の代謝活性と分子時計を定量するシステムの構築 :エネルギー代謝経路の代謝物であるATP、NAD+、pHを可視化するレポーターラインの作成を完了した。 (計画2)エネルギー代謝経路による分子時計の周期長制御機構の解明:エネルギー代謝経路を制御するホルモンの一種が分子時計の周期長を制御することを発見した。 (計画3)種間で周期長の違いをうむ分子基盤の解明: 計画2で発見したホルモンを改変することで、ゼブラフッシュの体節形成周期(30分)をターコイズキリフッシュの体節形成周期(2時 間)と同じ長さまで遅くすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(計画1)ゼブラフィッシュ胚の代謝活性と分子時計を定量するシステムの構築 :すでに作成済みであるエネルギー代謝経路の代謝物であるATP、NAD+、pHを可視化するレポーターに加え、分子時計を可視化・定量化するシステムを構築する。 (計画2)エネルギー代謝経路による分子時計の周期長制御機構の解明:当該研究によって発見したホルモンがどのように分子時計を制御するのかを明らかにするために、その分子詳細を解明する 。そのため、ホルモン制御に関与する遺伝子をCrispar/CAS9法などを用いて抑制した胚、光遺伝学を用いて局所的に、一過的に過剰発現させた 胚を用いて、エネルギー代謝と分子時計を可視化・定量することで、その分子基盤を明らかにする。 (計画3)種間で周期長の違いをうむ分子基盤の解明: 私は、当該研究によって発見したホルモン量の違いが、両種の周期長の違いを産むと仮定している。そこで、両種のホルモン量、及びエネルギー代謝経路の代謝物を比較することで仮説を検討する。
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