研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
19H04771
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 純 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30345235)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | proneural wave / Notch / Delta / cis-inhibition / 細胞内輸送 / 後期エンドソーム / Rab7 / ESCRT |
研究実績の概要 |
様々な動物の発生過程において、未分化細胞の分化パターンはNotchシグナルによって時空間的に制御される。Notchシグナルは隣り合う細胞間でフィードバックループを形成し、側方抑制によって分化細胞と未分化細胞がゴマシオ状に配置されたパターンを形成する。NotchのリガンドDeltaは、通常、隣接する細胞においてNotchシグナルを活性化し(trans-activation)、その一方でDeltaを発現する細胞自身においてはNotchを不活性化する(cis-inhibition)。これまでの研究から、cis-inhibitionがNotchのダイナミクスの違いを生む鍵を握っており、その非線型な挙動がハエ視覚中枢におけるNotchの2回の活性化を制御していると考えられた。多様なNotchダイナミクスの起源を解明するため、cis-inhibitionの非線型性を産む分子メカニズムを解明することを目指した。 今年度はDeltaの発現量に応じたcis-inhibitionの非線型性を検証するため、Deltaを異所発現するためのUAS-Delta系統を多数作出した。これらの系統を用いて様々な強度でDeltaを異所発現する細胞群を誘導し、その周囲でNotchが活性化し、Deltaを強く発現する細胞自身ではNotchが不活性化することを見出した。また、DeltaおよびNotchの細胞内輸送によってcis-inhibitionが生じるメカニズムを解析した。その結果、NotchとDeltaが同一細胞内で相互作用することで、NotchがRab7でラベルされる後期エンドソームに強く局在し、急速に分解されることが示された。一方、Deltaも後期エンドソームに局在するが、分解されずに細胞膜にリサイクルされる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な強度でDeltaを異所発現する細胞群を誘導し、その周囲でNotchが活性化し、Deltaを強く発現する細胞自身ではNotchが不活性化することを見出した。また、NotchとDeltaが同一細胞内で相互作用することで、NotchがRab7でラベルされる後期エンドソームに強く局在し、急速に分解されることが示された。一方、Deltaも後期エンドソームに局在するが、分解されずに細胞膜にリサイクルされる可能性が示された。これらの成果は多様なNotchダイナミクスの起源を解明するために重要な知見であると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
NotchとDeltaが同一細胞内で相互作用し、両者が後期エンドソームに輸送されることが示されたが、実際にはNotchのみが分解されるはずである。Deltaはなんらかの機構によって細胞膜にリサイクルされると考えられる。DeltaおよびNotchとリサイクルエンドソームのマーカーであるRab4との共局在について解析し、Notchだけが分解されDeltaがリサイクルされる機構を解明する。また、数理モデルによる解析から、cis-inhibitionによってNotchが2回活性化することが示されているが、Notchの2回目の活性化は分化した神経幹細胞において生じる。神経幹細胞におけるNotchの活性化がどのような役割を持っているか、神経幹細胞特異的に発現する様々なマーカーとNotch活性化のタイミングを比較し、Notchの時間的ダイナミクスの役割を明らかにする。
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