研究実績の概要 |
2020年度は以下の内容に取り組んだ。 (1) 昨年度までに得られた結果と、今年度に追加で行った計算の結果を論文にまとめ、国際誌に掲載した(Uriu, Liao et al. 2021 Elife)。今年度に行った計算は、欠陥のある体節境界のサイズ分布を求めるもので、実験とシミュレーションが良く一致することが分かった。 (2) Delta-Notchシグナルによる細胞間相互作用には数十分の時間遅れがあることが知られているため、これまでの位相振動子モデルにこの時間遅れの効果を組み込み、その影響について解析を行った。未分節中胚葉には前後軸に沿った分節時計の振動数勾配が存在するが、細胞間カップリングに時間遅れがあると、この振動数勾配が再同期に影響を及ぼすことが分かった。さらに分節時計の振幅の自由度も記述できるようモデルを拡張した。ゼブラフィッシュ未分節中胚葉では前後軸に沿って遺伝子発現リズムの振幅勾配が観察されている。この振幅勾配によって前後軸に沿った再同期過程の違いが起きるかをシミュレーションによって解析した。 (3) ゼブラフィッシュでは、分節時計の細胞間相互作用にはDeltaCとDeltaDタンパク質の二つが関与する。DeltaCタンパク質の濃度は振動する一方、DeltaDの濃度は時間とともに変化しない。このDeltaDが分節時計の同期にどのように働くのかを調べるため、共同研究者と協力してDeltaC/Dタンパク質濃度の時間動態を記述するモデルを作成した。DeltaDタンパク質の存在下および非存在下での同期を数値計算によって調べた。 (4) ゼブラフィッシュ生体内での分節時計のライブイメージングを共同研究者とともに行った。Notch シグナルの阻害剤を除去した後のレポータータンパク質発現パターンをイメージングすることができた。
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