研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
19H04773
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川口 綾乃 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90360528)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 神経前駆細胞 / 神経幹細胞 / outer radial glia / 神経発生 |
研究実績の概要 |
神経前駆細胞は大脳発生の時刻進行に伴い、分裂パターンを増殖性の対称分裂からニューロン産生の非対称分裂へ、生じる娘ニューロンの個性を深層ニューロンから上層ニューロンへと変化させる。代表者はこれまで単一細胞トランスクリプトーム解析と関連する実験に基づき、この発生時刻進行に伴う神経前駆細胞の遺伝子発現変化の様相を明らかとしてきた。本課題研究では、(1)これらの遺伝子発現パターンにより捉えられる前駆細胞内の「時計」設定が、具体的にどのように「場」の調整をうけ、娘ニューロンの運命決定に関与しているのか、逆に(2)細胞内の「時刻」進行に伴い発現する分子がどのように「場」への反応性を変化させているのか、この両面から研究に取り組むことによって、脳発生の頑強さの基盤となる「場」と「細胞内的な時計」の協調的制御の具体例を明らかとすることを目的としている。(1)について、本年度は胎生期脳組織中で細胞位置を変化させる実験操作の結果観察された現象について、組織学的検討ならびにスライス培養を用いたライブイメージングという別の側面から細胞動態の評価を中心とした研究を行った。また(2)については、いくつかの候補分子についてその発現を胎生期脳組織中でノックダウン・ノックアウトさせた場合、あるいは変異体分子を強制発現させた場合に観察される前駆細胞動態の評価を行った。その中で前駆細胞の位置異常を示す表現型が観察された分子について、変異マウスを作成し詳細な解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)については本課題研究の立案当初の想定外とも言える表現型が観察され、これにより特に脳室下帯の構成細胞間での相互作用による幼若ニューロンの移動に注目した「場」と細胞運命決定に関わる新たな視点が提供された。また(2)においてはiGONAD法を導入して対象遺伝子の変異マウスの作出と表現型解析を行ったことで、現象の分子的背景へ効率的にアプローチすることができた。これらのことから総合的に「概ね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
対象分子の各種機能ドメイン変異体によるレスキュー実験や共培養等のin vitroによる検討を行うことで、どのような「場」の変化ならびに「場」と細胞とのコミュニケーション異常が細胞挙動変化をもたらしたのかを明らかとする。現在いくつかの変異マウス系統を樹立中であり、これらを解析することで前駆細胞動態の変化をもたらした分子機構を明らかとする。
|