研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
19H04777
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
奥田 覚 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80707836)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
第一に、三次元バーテックスモデルを用いて、単層の上皮シートの力学的な安定性を解析し、単層の細胞シートに内在する力学的な不安定性が細胞脱離を引き起こし、上皮シートの層構造変化を引き起こすことを明らかにした。まず、単層の上皮シートの構造を三次元バーテックスモデルにより記述した。次に、単層シートの構造を拘束条件として、上皮シートを構成する多細胞の力学エネルギーを記述した。さらに、上皮シートに埋め込まれた1細胞に着目し、その脱離状態をパラメータとする関数として力学エネルギーを記述した。そして、力学エネルギーのランドスケープから、上皮シートの安定性を検討した。その結果、細胞の隣接数が低く、密度が高い条件では、単層シートの構造が力学的に不安定になることが明らかになった。加えて、着目する1細胞のアピカル面、ラテラル面、ベーサル面にアクティブな力な加わるとき、上皮シートの不安定性が促進され、特に、アピカル面とベーサル面に加わる力は細胞の脱離方向を決めることを明らかにした。 第二に、細胞の増殖動態を,三次元膜動力学モデルの粗視化レベルで定式化した.まず,三次元膜動力学モデルは,個々の細胞の動的な形態を,可変なトポロジーを有する多面体により粗視的に表現した.また、各細胞の分化状態は,各細胞の示教変数パラメータとして表現した.さらに,各細胞の増殖動態は,力学エネルギー関数を用いた細胞変形,および,トポロジー変化による細胞分裂に分けて表現した.次に,接着動態を,三次元膜動力学モデルの粗視化レベルで数理モデル化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基盤となる数理モデルの構築は当初の予定通り進展した。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、これまで開発した細胞脱離の数理モデルに対して、神経分化を制御するNotch-Deltaシグナリングによるパターニング機構を導入し、神経発生の初期において神経上皮組織が単層構造から多層構造へ遷移する過程おける、力学・生化学的な相互作用機構の解明を目指す。まず、Notch-Deltaシグナリングの制御過程を微分方程式として数理モデル化し、三次元バーテックスモデルで記述された多細胞の三次元構造内におけるパターニング過程を解析し、細胞の幾何構造がパターニングに及ぼす影響を解析する。さらに、力学エネルギーにおいて細胞間の接着性を記述するパラメータを、Notchの密度に依存する関数として記述し、Notch-Deltaシグナリングが細胞の力学エネルギーを介して層構造変化に及ぼす影響を解析する。これにより、神経細胞の分化と層構造変化の力学・生化学的な相互作用を明らかにする。 第二に、細胞内・細胞間における極性・骨格・接着動態を,三次元膜動力学モデルの粗視化レベルで数理モデル化する.まず,細胞極性動態は,多面体で表現された細胞内における反応拡散方程式により与える.また,細胞骨格・接着の構造は,カドヘリン・インテグリンを模した細胞膜上の接着ノード,アクチン細胞骨格ネットワークをもした細胞質内の骨格ノードにより表現する.さらに,この細胞骨格・接着の動態は,ノードの運動方程式,および,ネットワークトポロジーの変換により表現する.
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