公募研究
本研究は、ニワトリ・ウズラの発生段階の脊髄神経組織をモデルにし、(I)初期神経発生段階のパターン形成と領域特異的な細胞増殖の関係と、(II)神経分化開始後の局面における細胞の増殖と分化のバランスを制御する機構を明らかにすることにより、種特異的な発生時計が器官サイズに対応し、なおかつ相似的に形成されるメカニズムを明らかにしようというものである。2019年度は、ニワトリ胚、ウズラ胚の両方から、互いに対応する領域の神経前駆細胞を神経管から単離し、その発現遺伝子をmRNAシーケンス法による網羅的発現解析により両種で発現量が異なる遺伝子を同定した。その結果、細胞の増殖や分化に関与することが知られている複数の遺伝子の発現量が異なっていた。その中で、転写因子をコードする遺伝子に着目して、ニワトリ・ウズラ胚における強制発現、機能喪失実験を進めている。これと平行し、ニワトリ・ウズラ胚で神経管のパターンが相似関係になるメカニズムについて解析を進めた。この目的で、神経管内の各領域における増殖効率を両種間で比較した。その結果、ニワトリ胚で神経分化が始まるまでは増殖効率に変化はなかったが、神経分化が開始した後のステージにおいて、前駆細胞の増殖効率がニワトリ胚で有意に高く、すべての領域で相似的に細胞数が増えていくことが明らかになった。この結果から、ニワトリ胚は時間をかけて大きくなり、ウズラ胚は早く、小さな器官が形成されることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は予定通りにmRNAシーケンシング法によって網羅的発現解析を行い、サイズ変化を及ぼす遺伝子を同定することができた。現在、その中で実際に直接の機能を果たす遺伝子の同定と機能解析を進めている。
サイズ変化をもたらす遺伝子の機能解析を進めるほか、その上流制御系を明らかにする。また、マウスをはじめとする、他の種においても機能が保存されているかを明らかにする。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Frontiers in Genetics
巻: 10 ページ: 1103
10.3389/fgene.2019.01103
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 15911
10.1038/s41598-019-52040-9.
Frontiers in Neuroscience
巻: 13 ページ: 1022
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Development
巻: 146 ページ: dev176784
10.1242/dev.176784.