研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
19H04782
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
別所 康全 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70261253)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発生 / ゼブラフィッシュ / 側線器官 / 時間制御 / 神経 |
研究実績の概要 |
多細胞生物のそれぞれの細胞は、外部のシグナルを内在するゲノムに照らし合わせてふるまい、組織や器官は、それを構成する細胞の相互作用で自律的に形成される。したがって、組織や器官の発生の時空間的制御機構は単純な遺伝学では解明できず、細胞の社会的な相互作用に着目する必要がある。本研究では水流を感知する器官であるゼブラフィッシュ側線器官の形成をモデル系として、時間制御を利用した形づくりの新たなメカニズムを明らかにする。これまで明らかになっている唯一の発生過程の時間制御である体節形成では、細胞内に計時システムがあったが、側線器官形成では、細胞の社会的な相互作用が計時器官として機能しているというアイデアであり、新たな計時システムの解明を目指した。 ゼブラフィッシュ側線器官原基と体節との相互作用をライブイメージング法を用いて観察し、側線器官原基が通る経路を詳細に検討した。側線器官原基は体節から分化したmuscle pioneer細胞に沿って集団移動することが知られているが、muscle pioneer細胞をレーザーアブレーションで取り除いても側線器官原基の集団移動は、その経路から大きく外れることがないことを示した。このことから、側線器官原基がmuscle pioneer細胞を目印に集団移動しているのではないことが示唆された。また、側線器官原基はmuscle pioneer細胞がなくなっても集団移動を続けるので、側線器官原基の細胞集団は内在的に時間制御をおこなって移動していることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
側線器官原基の集団移動が体節という場と相互作用し、内在的な時間を計測するメカニズムに従って集団移動していることが明らかになりつつある。また、側線器官原基に中枢神経系からの指示を伝える遠心性神経の役割も明らかになりつつあるのでおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、側線器官原基に投射しているアセチルコリン性の遠心性神経の役割について、詳細に解明したいと考えている。これまでにアセチルコリン受容体の阻害剤を用いた薬理学的実験を中心におこなったが、遠心性神経の軸索をレーザーを用いて物理的に切断して、遠心性神経からの入力を遮断することを試みる。
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