研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
19H04787
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
島崎 琢也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (00324749)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経分化 / 神経幹細胞 / 時系列特異的 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
中枢神経系(CNS)発生における神経幹細胞(NSC)の時系列特異的分化能変化の分子機構に関しては、グリア分化のタイミング制御機構を中心これまで多くの研究がなされてきてはいるが、時系列特異的ニューロンサブタイプ分化制御に関しては未だ謎が多い。これまで我々は、その制御因子として核内受容体型転写因子の一種であるCOUP-TFI/II、そして、その下流でグリア分化能を制御するマイクロRNA、miR-17/106およびmiR-153の同定してきた。しかしながら、COUP-TFI/IIの下流におけるニューロンサブタイプ分化制御に関しては不明であった。そこで我々はまず、マウスES細胞分化系を用いたトランスクリプトーム解析によって、Coup-tfI/IIのノックダウン(KD)には反応するが、miR-17の強制発現に反応せず、かつ発生にともなってその発現が変化する遺伝子群のうち、発生初期特異的にNSCsにおいて発現が高い転写因子群に着目した。そして、発生が進み発生初期に特異的なニューロンへの分化能が消失したマウスES細胞由来NSCsに候補遺伝子群を複数同時に強制発現させ、発生初期に特異的に分化するIsl1陽性ニューロンへの分化能を回復させる幼若化因子候補のスクリーニングを行った。その結果、その幼若化を引起せる最小遺伝子セットとして4種類の転写因子を発見した。また、これらをマウス14日胚の中脳および前脳由来のNSCに強制発現させても同様に、発生初期に特異的なドーパミン作動性ニューロン、前脳腹側のIsl1陽性ニューロン、そして大脳皮質の第5層に特的なCtip2陽性ニューロンへの分化能の回復が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究から、マウス中枢神経系の様々領域において、発生の初期に特異的なニューロンへの分化能を、その初期型ニューロンへの分化能を失った後期のNSCsで回復させる4種類の転写因子セットを同定し、それらの胎生期中枢神経系における発現パターンの解析も行った。また、それぞれの遺伝子ノックダウンによって、発生初期型NSCsのドーパミン作動性ニューロンへの分化が阻害された。
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今後の研究の推進方策 |
神経幹細胞(NSC)幼若化4因子それぞれのニューロンサブタイプの時系列特異的分化における役割を、遺伝子ノックダウンあるいはノックアウトにより行う。まず、それぞれの遺伝子に対するshRNAを発現するレンチウイルスベクターをマウスES細胞由来NSCsに導入し、ニューロンサブタイプ分化の変化をin vitroで検証する。これによって特異的な表現型、すなわち、初期型ニューロンの分化異常が観察された場合は、そのshRNA発現すレンチウイルスベクターを、マウス11日胚胎仔脳内あるいは初代培養細胞に導入することによって遺伝子ノックダウンを行い、初期の神経分化期におけるニューロンのサブタイプの分化を観察する。尚、shRNAによるノックダウンの効果は、予めES細胞分化系により確認しておき、ノックダウンにより表現型が現れない場合は、CRISPR-Cas9システムを用いたi-GONAD法によるマウス初期胚における遺伝子ノックインを行い細胞自律的な表現型を解析するシステムを確立し、実行に移す。また、それぞれの遺伝子単独の機能欠失によって期待される表現型が得られない場合は、幼若化4因子全てを欠失させるコンディショナルノックアウトES細胞ラインを作出し、in vitroで表現型を確認した後に、テトラプロイド凝集胚形成を介したノックアウト胚の解析を行う。
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