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2019 年度 実績報告書

神経幹細胞の上皮構造再生能の経時変化メカニズムと複雑脳形成における役割

公募研究

研究領域脳構築における発生時計と場の連携
研究課題/領域番号 19H04791
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

松崎 文雄  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (10173824)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード神経幹細胞 / 大脳皮質 / 上皮構造 / 再生
研究実績の概要

神経幹細胞(Radial glia:RG)は分裂軸の乱れによって、分裂面が脳室面から外れると、一方の娘細胞がapical endfoot を失う。神経幹細胞の増殖期には、この娘細胞は極性を再生し、失ったapical process を伸張することを最近見出した)。その先端にはカドヘリン等の上皮接着帯の構成成分を全て持ち合わせた接着斑が伸張と同時に形成され、細胞膜成分の補給によって脳室面に到達し次第(aipcal 面)、上皮接着構造に加わり、apical endfoot を再構築する。今年度はその分子メカニズムを明らかにすることを目標に置いた。この仕組みが上皮ー間葉転換に類似していることから、そこで機能していることが知られているβ2インテグリンのノックダウンを神経発生早期(分裂期から初期神経発生期)に試みたところ、RGの再生能が阻害された。また、β2インテグリンの輸送やリサイクルに関与していることが知られているRas型small GTPaseであるR-Rasの活性型を再生能をすでに失っている神経発生盛期(E14)に発現させると、endfootの再生能が復活したことから、R-Rasおよびβ2インテグリンがこの再生能に必須であることが判明した。これらは、失われたapical endfootが再生する際にapical極性が再形成され、そこに膜成分が集積および、伸張しつつあるendfootの側面ででの接着等に寄与していると考えられる。また、Notchの活性もendfootの再生能に寄与していることが判明した。これらのepistasis(遺伝的上下関係)を調べたところ、Notch活性が最上流にあり、おそらく、Notch →R-Ras→β2インテグリンという過程が再生能に機能していると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

哺乳類の進化の過程で大脳の飛躍的な複雑化・巨大化が進行してきた。脳回を持つ大脳(複雑脳と呼ぶ)の形成過程では、齧歯類には見られない新たな神経幹細胞層が神経発生期に形成され、大脳皮質の巨大化、特に、表層の神経層の発達に重要な役割を果すに至る。対称分裂期の神経幹細胞は高い上皮構造の再生能力を持ち、幹細胞が上皮構築を再生することを発見した。この上皮構造再生能は神経発生期には減衰してゆく。この減衰は、複雑脳の発生過程で脳室帯の幹細胞が足を抜いて移動し、外幹細胞帯を形成するためには必須なメカニズムである。本研究では、(1)マウスを用いて、神経幹細胞の持つ上皮構造再生能とその経時変化のメカニズムを解明する。(2)複雑脳を持つフェレットをモデル系とし、複雑能の幹細胞も対称分裂期には高い上皮再生能を持つこと、この再生能が神経産生期に減衰することが新しい幹細胞帯の形成に必須であるという仮説を検証する。この(1)の部分にNotch →R-Ras→β2インテグリンという経路が働くことを明らかにできた。Notchは経時的に減衰してゆくので、そのことが再生能の喪失の原因であると考えられる。以上のように、これまでの目標は順調に達成している。

今後の研究の推進方策

マウスを用いて、増殖期の幹細胞が上皮再生能を保持する分子機構、細胞生物学的なメカニズムを明らかにする。再生途のapical processの先端の接着斑は伸長の足場として働いていると考えられる。増殖期において、分裂軸のランダム化によって幹細胞からendfootを失わせるmInscの発現と同時に、接着斑の構成成分Plekha7等の接着関連因子のmRNA抑制やdominant negative型の発現を行い、幹細胞からのapical endfootの再生率を計測し、この接着斑の必要性と役割を明らかにする。また、またこれらの知見を元に、ヒトオルガノイドやフェレットを用いて、oRGの形成の開始のタイミングが複雑脳で決定されていることを実証する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Endfoot regeneration restricts radial glial state and prevents translocation into the outer subventricular zone in early mammalian brain development2020

    • 著者名/発表者名
      Ikumi Fujita, Atsunori Shitamukai, Fumiya Kusumoto, Shun Mase, Taeko Suetsugu, Ayaka Omori, Kagayaki Kato, Takaya Abe, Go Shioi, Daijiro Konno & Fumio Matsuzaki
    • 雑誌名

      Nature Cell Biology

      巻: 22 ページ: 26 37

    • DOI

      10.1038/s41556-019-0436-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Lzts1 controls both neuronal delamination and outer radial glial-like cell generation during mammalian cerebral development2019

    • 著者名/発表者名
      T. Kawaue, A. Shitamukai, A. Nagasaka, Y. Tsunekawa, T. Shinoda, K. Saito, R. Terada, M. Bilgic, T. Miyata, F. Matsuzaki & A. Kawaguchi
    • 雑誌名

      Nature Communications volume

      巻: 10 ページ: 2780

    • DOI

      10.1038/s41467-019-10730-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dmrt factors determine the positional information of cerebral cortical progenitors via differential suppression of homeobox genes2019

    • 著者名/発表者名
      Daijiro Konno, Chiaki Kishida, Kazumitsu Maehara, Yasuyuki Ohkawa, Hiroshi Kiyonari, Seiji Okada, Fumio Matsuzaki
    • 雑誌名

      Development

      巻: 146(15) ページ: -

    • DOI

      10.1242/dev.174243

    • 査読あり
  • [学会発表] Structural plasticity of neural stem cells in mammalian brain development.2019

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki
    • 学会等名
      Baikal Neuroscience Meeting 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Structural plasticity of neural stem cells in mammalian brain development.2019

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki
    • 学会等名
      The 10th IBRO World Congress of Neuroscience IBRO 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] How has the brain expanded and acquired complexity in the mammalian2019

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki, Yuji Tsunekawa, Taeko Suetsugu, Ikumi Fujita, Quan Wu, Atsunori Shitamukai, Ayaka Omori, Osamu Nishimura, Shigehiro Kuraku
    • 学会等名
      第42回分子生物学会
  • [学会発表] 非分裂細胞に対するノックイン技術HITIとその展望2019

    • 著者名/発表者名
      恒川雄二
    • 学会等名
      ウイルスベクター開発研究センターキックオフシンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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