大脳新皮質形成のメカニズムに関して、“サブプレートニューロン”と呼ばれる大脳発生期に最初に生まれ、自発神経活動をする細胞群が脳神経回路構築に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。神経上皮細胞の幹細胞から次々に生まれ、正確な行き先まで移動後配置される過程で、サブプレートニューロン(SpN)が、後から生まれるニューロンに、シナプス伝達を介した信号を送ることで移動を促していることが明らかになった。SpNはこの他、視床-皮質連絡の確立や脳溝形成等重要な機能を果たしている。しかし早期の分子マーカーや、神経活動の特徴など未解明である。そこで、本研究はSpNの大脳新皮質形成、機能における役割の解明を目的とし、SpNのサブタイプを分子発現レベルで同定することを試みた。Lpar1-EGFPはSpN特異的にGFPを発現するトランスジェニックマウスである。SpNは複数のサブタイプがあり、Lpar1-EGFP陽性細胞はSpN全体の約40%を占める。そこでまずこのサブポピュレーションについて解析を行った。E17.5の大脳皮質を単離し、パパインで細胞を分離し、FACSソーティングでGFP陽性細胞を分画した。その後C1HT single-cell 解析システムを用いて800細胞のシングルセル解析を行った。 データはSueratを用いてnormalization、クラスタリング解析を行った。その結果、UMAPplotで8クラスターに分類された。各クラスターは、それぞれ特徴的な遺伝子マーカーにより、神経前駆細胞や、GABAニューロン、未熟ニューロン 、成熟ニューロンといったカテゴリーに分けられた。その後実際にどのクラスターがSP層に発現しているのかについて、Visium、空間的遺伝子発現解析の結果も用いて確認を行い、複数のSP層新規マーカー候補を同定した。
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