iNKT細胞は、CD1d分子上に提示された糖脂質を認識するT細胞抗原受容体を有する細胞集団である。胸腺内で機能の異なる少なくとも3つのサブセット(NKT1、NKT2、NKT17細胞)へと分化し、それぞれが異なる免疫応答の局面で働くことが知られているが、各種iNKT細胞サブセットの分化運命決定機構はよく分かっていない。本研究では、iNKT細胞分化運命決定を担う‘ネオ・セルフ’としての糖脂質抗原の存在を念頭におき、その違いがもたらす結果(i.e.分化運命決定)のメカニズム解析を行ってきた。 C57BL/6マウスはNKT1細胞が優位であり、BALB/cマウスはNKT2細胞優位である。このように、遺伝的背景の違いによってiNKT細胞サブセットの分化に偏りが生じることは以前から知られており、この現象は「分化多様性」と呼ばれているが、その分子機構は全くわかっていない。これまでの研究結果から、iNKT細胞の分化多様性は、ホスト(胸腺上皮細胞)の遺伝的背景には影響を受けず、骨髄細胞の遺伝的背景に依存することが明らかとなった。さらに、骨髄由来の細胞(主にCD4+CD8+ダブルポジティブ(DP)細胞)の発現する細胞表面分子が、分化多様性に重要であることが判明した。そしてC57BL/6とBALB/cマウスの胸腺細胞を用いたRNA-Seq解析を行い、遺伝的背景の違いによって発現量に違いが見られる膜タンパク質や細胞内シグナル伝達分子の候補分子を同定した。そして重要なことに、数種類の異なる遺伝背景のマウスを用いた実験から、この候補分子の発現量と分化多様性には相関が見られることを明らかにした。これらの結果は、現在論文としてまとめ投稿目前の状況である。
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