公募研究
全身性エリテマトーデス(SLE)などのリウマチ性自己免疫疾患では種々の多分子複合体への自己抗体産生がおこる。TLR7が種々のSLEマウスモデルでのSLE発症に必須であることから、TLR7の内因性リガンドであるSm/RNPへの自己抗体はSLE発症で重要な役割を果たすと示唆される。抗Sm/RNP抗体産生の仕組みを明らかにするため、Sm/RNPを認識しB細胞に発現する抑制性受容体CD72とアポトーシス誘導受容体Fasの両方を欠損するマウスは重度のSLEを発症することから、抗DNA抗体56R H鎖トランスジェニックCD72欠損Fas欠損マウスの脾臓からプラズマブラストを単離し、1細胞PCR法により抗体遺伝子を単離して解析した。個体によっては、ネオセルフ である変性Sm/RNPに強く反応し、CD72欠損により成熟B細胞で出現するVκ38C/56RH鎖が主な抗Sm/RNP抗体であったが、個体によっては他のVκを用いた抗体が抗Sm/RNP抗体となっており、個体間での違いを認めた。そこで、より多くの個体での自己抗体産生プラズマブラストを定量的に解析するため、B細胞の種々の分画をVκ38C/56RH鎖への抗イディオタイプ抗体を用いて解析した。その結果、56R H鎖トランスジェニックCD72欠損Fas欠損マウスの脾臓では、Vκ38C/56RH鎖産生B細胞は濾胞および辺縁帯B細胞で増多するものの胚中心B細胞やプラズマブラストではほとんど検出されないことが明らかとなった。一方、このマウスの脾臓ではCD11c+のage-associated B細胞 (ABC) が出現し、ABC中にはVκ38C/56RH鎖産生B細胞が多数存在することが明らかとなった。これらの結果から、SLE発症に関わる抗Sm/RNP抗体産生細胞がABCへと分化することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
一細胞PCRによる自己抗体産生の解析については、マウス個体差があることが明らかとなった。そこで、より多数のマウスでの自己抗体産生細胞をより定量的に解析するため、ネオセルフ である変性Sm/RNPにより強く反応するVκ38C/56RH鎖からなる抗体産生細胞の解析をVκ38C/56RH鎖への抗イディオタイプ抗体を用いて行なったところ、抗Sm/RNP抗体などの自己抗体を産生し、SLE様の自己免疫疾患を自然発症する56R H鎖トランスジェニックCD72欠損Fas欠損マウスの脾臓にAge-associated B cell (ABC)が出現し、その中にVκ38C/56RH鎖産生細胞が増多しているという新知見を得、SLE発症に関わる自己抗体産生におけるABCの役割を明らかにすることができた。
SLEを発症するマウスモデルの脾臓に出現したABCに抗Sm/RNP抗体産生細胞が集積することを示唆する知見が得られたので、今後、脾臓および腎臓でのプラズマブラストやABCにおけるVκ38C/56RH鎖産生細胞の解析を行い、さらに1細胞PCR法で抗体遺伝子を単離し、変性Sm/RNPや非変性Sm/RNPへの反応性を解析することで、SLEでの自己抗体産生のメカニズムおよびネオセルフ としての変性Sm/RNPの役割を明らかにする。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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