研究領域 | ネオ・セルフの生成・機能・構造 |
研究課題/領域番号 |
19H04806
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依田 成玄 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (70335454)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | がん免疫 |
研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ぶどう膜悪性黒色腫、肺がん、腎細胞がんなど、様々な悪性腫瘍において、SF3B1、SRSF2、U2AF1などのスプライス因子に高頻度の体細胞変異が報告されている。スプライシング因子がん変異を直接標的とした抗がん薬が開発中であるがこれまでの研究では薬効は不十分であり、スプライシング因子がん変異を有する腫瘍の治療法開発に新規のアプローチが必要である。 スプライシング因子変異により異常なスプライシング産物(異常なスプライシングバリアント)が産生されるのは明らかとなっているが、これより合成される異常タンパク質(ネオ・セルフ)をターゲットとしたがん免疫治療が可能ではないかと考えた。本研究は、MSIがんと同様にネオアンチゲンの増加が予想されるスプライシング因子変異がんに対しても抗PD-1抗体を用いたがん免疫治療が効果があるかどうか明らかにする。 抗PD-1抗体を用いたがん免疫治療のマウスモデル(同系マウス腫瘍モデル、シンジェニックマウスモデル、syngeneic mouse model)用いて抗PD-1抗体治療が有効かどうか検討する。具体的には、細胞にスプライシング因子遺伝子の野生型または変異型を導入し、マウスに生着させたのちに抗PD-1抗体治療を行う。これまでに各種スプライシング因子遺伝子を導入した細胞の作成を完了した。また、スプライシング因子変異遺伝子によって誘導される異常なスプライシングバリアントを同定するとともに、そこから合成されるネオ・セルフタンパク質を予想する。各種スプライシング因子遺伝子を導入した細胞においてどのような異常スプライシング分子が発現しているか次世代シーケンサーによるRNA-seqを実施し、データの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに以下の解析を実施している。 計画#1 スプライシング因子変異細胞を用いた抗PD-1抗体がん免疫実験:マウス各種がんモデル細胞でスプライシング因子野生型または変異型遺伝子を導入し、細胞株を作成した。がん免疫実験の効果がホストの免疫システムによるものであることを確認するために、がん細胞におけるPD-L1の発現に変化があるかどうか確認実験を行った。 計画#2 スプライシング因子変異細胞における異常スプライシング分子の解析:各種スプライシング因子遺伝子を導入した細胞においてどのような異常スプライシング分子が発現しているかRNA-seqにより解析を行っている。シークエンシング及びデータ解析方法は、申請者の研究室のパイプラインで行っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き以下の解析を継続する。 計画#1 スプライシング因子変異細胞を用いた抗PD-1抗体がん免疫実験:マウス各種がんモデル細胞でスプライシング因子野生型または変異型遺伝子を導入し、細胞株を作成する。がん免疫実験の効果がホストの免疫システムによるものであることを確認するために、がん細胞におけるPD-L1の発現に変化があるかどうか確認実験を行う。 計画#2 スプライシング因子変異細胞における異常スプライシング分子の解析:各種スプライシング因子遺伝子を導入した細胞においてどのような異常スプライシング分子が発現しているかRNA-seqにより解析を行う。シークエンシング及びデータ解析方法は、申請者の研究室のパイプラインで行う(Kon, Blood, 2018)。 計画#3 スプライシングを変化させる抗がん剤の開発とがん免疫との関連解析:スプライシングを変化させる抗がん剤がどのような異常スプライシング分子を誘導するかRNA-seqにより解析する。また、チェックポイント阻害剤との併用により効果が増強するかどうか、がん免疫との関連解析を行う。
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