研究領域 | ネオ・セルフの生成・機能・構造 |
研究課題/領域番号 |
19H04822
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
関谷 高史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 免疫応答修飾研究室長 (80519207)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 自己免疫疾患 / ネオ抗原 / 生体イメージング / CD4T細胞 |
研究実績の概要 |
様々な免疫関連疾患では、獲得免疫系による「セルフ」抗原の認識により発症の直接の引き金が引かれるが、そこに至るまでの過程で「ネオセルフ」抗原の作用が病態を左右する重要な働きを持つことが示唆されてきている。例えば、感染は様々な自己免疫疾患のイニシエーションとなることが疫学的に示唆されている。そこで本研究では、自己免疫疾患の発症や自然寛解過程における、CD4T細胞の「セルフ」抗原の攻撃に対する、微生物由来抗原を始めとした「ネオセルフ」抗原刺激のメカニズムや機能の追求を、新規Nr4a1レポーターマウスを用いて行う。 令和元年度の研究では、本レポーターマウスを用い、実験性脳脊髄炎(EAE)の発症と寛解の過程における免疫応答の活性化の場(組織、器官)の推移の法則の検出を試みた。現在まで、実験は2連で7ラウンド、計14匹の解析を行った。その結果、EAE発症の初期過程で、腰部から脊髄に沿って免疫応答の活性化が生じる現象を再現性を持って捉えることに成功している。特に、EAE発症の初期段階では第5腰椎(L5)に病原性T細胞が集積することが明らかとされているが、本レポーターマウスでもEAEの発症にさきがけ、L5から特異的に、免疫細胞の活性化を示すルシフェラーゼ発光が検出されている。従って本レポーターマウスは免疫応答の活性化部位を正確に示していることの裏付けが取れている。 一方、EAEはマウスの系統により異なった病態を示すことが知られている。特にSJL系統のマウスでのEAEは、発症と寛解を繰り返すことが特徴的であり、本研究で目指す発症と寛解における免疫応答の両方を捉える格好の研究材料となり得ると考えられた。そこで、令和元年度の研究では、本レポーターマウスをSJL系統に戻し交配を行い、この系統のレポーターマウスでのEAEの検討を開始し、発症と寛解過程それぞれにおける免疫応答の場の検出に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、EAEの発症、寛解過程における免疫応答の場は同定されており、それらの場を構成する因子の解析が進んでいるはずであるが、現時点では免疫応答の場は複数見出したが、分子・細胞レベルでの解析にはようやく着手した段階であるため、やや遅れているとの評価に至った。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度も、上述レポーターマウスを用い、引き続きEAEの発症と寛解の過程における免疫応答の活性化の場の推移の法則を検出する。SJL系統のレポーターマウスの構築が完了したため、このマウスを最大限に活用し、発症と寛解に寄与する免疫応答の場を確実に捉えることを目指していく。続いて、見出された場から、GFP蛍光を指標に活性化細胞を取得し、以下の解析を試みる。 ①EAEの病態に深く関与する活性化細胞種の同定: 上述のように同定された免疫応答の場から、GFP陽性細胞を単離する。これらの細胞をsingle cell RNAシーケンシングにより解析し、結果のクラスタリングをコンピューター解析により行い、GFP陽性細胞がどのような細胞種から構成されているかを網羅的に解明する。続いて、同定された細胞種をソーティングにより取得後、レシピエントマウスに移入し、EAE病態に対する作用を検討する。以上の実験により、病態に関与した細胞種の同定を試みる。 ②EAEの病態に関与する因子の探索 Nr4a1新規レポーターマウスを用いた検討では、病態と免疫応答の活性化の場を、生きたマウスでリアルタイムに照らし合わせて解析することができる。この強みを活かし、病態の進行や寛解で重要なタイミングや場を同定し、それらの場から細胞、組織、血液を採取し解析することで、病態に関与する因子の探索を試みる。RNA-seq, プロテオーム解析、メタボローム解析によりそれぞれ遺伝子、タンパク質、代謝産物の同定を試みる。
|