原虫を電子顕微鏡で観察すると、その細胞質内にウイルスのビリオン様の構造体が観察されることが多数報告されてきた。しかしながら、原虫の細胞質内に共生していると考えられるこれらのウイルスが、原虫の増殖や生存に関与しているのか、また、どのような複製機構をとっているのかは全く不明であった。一方で、宿主の特定の臓器、組織に原虫とともに寄生、感染しているウイルスもみられる。この場合は原虫の内部ではなく、外部でウイルスと原虫が混合感染、あるいは共生感染している。ウイルスと原虫は、互いにその共生感染状態の中で影響を与え合い、それぞれが単独での感染の表現型とは異なる感染形態をとり、共存共栄を果たそうとする。本研究の目的は、モデルとしてクリプトスポリジウム原虫とこの内部共生及び外部共生ウイルスを研究対象とし、原虫内部での共生と外部での共生感染でのウイルスの存在意義を解明することである。 本年度は、以下の項目について研究を実施した。 1)実験室におけるロタウイルスとクリプトスポリジウムの外部共生の実証試験 (i)ロタウイルスとクリプトスポリジウムの混合感染が頻発している農場において、仔ウシの下痢の状態(水様便、軟便等)、糞便中の原虫の虫卵数、ウイルスの同定を経時的に解析した。 (ii)ロタウイルスとクリプトスポリジウムの混合感染の状態を解析するため、培養細胞に両病原体を感染させ、混合感染におけるウイルスと原虫の増殖を単独感染時と比較解析した。 (iii)dsRNAウイルスを模倣したPoly(I:C)を細胞に添加し、宿主細胞の抗ウイルス活性を誘導した。この後、原虫を感染させることで増殖阻害が起こるか解析した。
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