研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
19H04829
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 好隆 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (40754940)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EBV / ウイルス感染 / ネオウイルス学 / 数理科学的解析 |
研究実績の概要 |
ウイルスは効率よく子孫ウイルスを標的細胞に感染させるため、宿主に寄り添って(寄り添うフリをして)、感染に有利な環境になるのを宿主内でじっと待つ(潜伏感染)。そして、宿主を裏切り、ウイルス粒子の産生(溶解感染)を起こす。 全人口の90%以上が感染しているEpstein-Barrウイルス(EBV)を主な研究対象として、周囲の環境が感染細胞の運命決定(潜伏感染を継続するか溶解感染へ移行するかなど)に、どのような影響を及ぼすかを解析することを目的に本研究計画を進めた。 RNAseq解析により、EBVの感染初期にウイルス産生に関わる遺伝子群が発現していることが示唆された。しかし、RNAseqは集団での遺伝子発現を捉えるスナップショットに過ぎず、時間分解能が弱いという欠点がある。そこで、組換えウイルスを用いたFate mappingにより、直接的に感染細胞の運命を追えるシステムを開発した。本システムにより、EBVの感染初期にウイルス産生に関わる遺伝子群が発現していることを証明した。さらに、EBV感染のダイナミクスを経時的に追い、EBV感染の広がりを数理モデル化した。本研究で樹立した数理モデルにより、EBV感染の初期ではウイルス粒子産生は起きていないことが改めて確認された。以上より、EBV感染の初期では不完全なウイルス産生感染(abortive lytic infection)をいう中間状態を経由して、潜伏感染の成立に至ることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組換えEBVを使用したFate mappingにより、EBV感染の初期では不完全なウイルス産生感染(abortive lytic infection)をいう中間状態を経由して、潜伏感染の成立に至ることが実証できた。また、EBV感染の広がりを数式で記述することも達成できた。以上の結果は、論文としてまとめて、現在投稿中である。総じて、概ねに計画は進展していると考える。 一方で、コロナウイルス感染症の影響でウイルス感染細胞の周囲の環境に関するメタボローム解析には遅れが生じはじめており、今後対策を考えていく。
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今後の研究の推進方策 |
周囲の影響がウイルス感染に与える影響のフェノタイプは捉えつつある。次年度は、このフェノタイプの責任分子の同定を精力的に進めていきたい。メタボローム解析は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、共同研究先の人員確保困難で遅れがでている。周囲の影響がウイルス感染に与える影響のフェノタイプを司る分子の同定は薬剤スクリーニングなど別の方法で探索することも模索していきたい。さらに、本研究課題を進めて行く中で想起した環境を介した異種ウイルス間の相互作用についても、本研究課題を発展させながら解析を進めていこうと考えている。領域内の研究者と密に連絡・連携を取りながら、研究を進展させていきたい。
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