研究実績の概要 |
様々な感染症で、感染者の体内に多くの不完全ウイルス(様)粒子が存在する場合のあることが知られているが、その発生メカニズムに対する理解やその発生をコントロール可能な実験系の欠如などから、その発生の意義についてはほとんど解明されていない。申請者らは、センダイウイルス(SeV)をモデルにQuasispeciesを形成しているウイルスサンプル中から複数のウイルスを単離し、その性状を解析することで、RNAウイルス感染で見られる不完全ウイルス粒子の一つであるコピーバック型欠損干渉(DI)粒子を発生するウイルスクローン(cCdi)の単離に成功し、DI粒子を産生しないクローン(cC)との比較から、DI粒子の発生が、ウイルス複製中に生じた変異によるものであることを明らかにした(Yoshida, J Virol 2018)。これまでに、急性感染性RNAウイルスにおいて、DI粒子の発生と培養細胞系での持続感染の関連が数多く報告されている。そこで、cC及びcCdi感染による持続感染性について検討したが、いずれも単独では持続感染を成立させることはできなかった。一方、これらのクローンを単離した元のウイルスサンプルを様々な動物培養細胞に感染させると、殆どの細胞は死滅するが、わずかに生残細胞細胞が生じ、この細胞は長期に渡って継代維持が可能であり、この生残細胞から生体温度での感染性を保持した持続感染性ウイルスを得ることに成功した。この持続感染性ウイルスの解析から、責任変異を同定するとともに、持続感染に宿主のリサイクリングエンドソーム系が関与していることを明らかにした(論文準備中)。
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