公募研究
申請者はウイルスの多様性を明らかにするために、さまざまな生物・環境からシークエンスされたメタゲノム・トランスクリプトームデータから新規ウイルス配列とその塩基多型の同定し、分子進化解析を行っている。この目的のために、バイローム(大規模ウイルス配列)解析システムを構築し、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータSHIROKANEで運用した。特に、研究計画班の澤教授らのグループと共同し、ザンビア、ボリビア等でサンプリングした蚊由来のトランスクリプトームデータを中心に解析を行った。また、研究計画班の布浦グループと共同してFLDS法で取得した海洋や糞便サンプル由来のトランスクリプトームデータからアセンブルされたウイルス様配列について、実際にウイルスに類似するのかを確かめるためのウイルスモチーフデータベースの作成を行い、判定が難しかった配列について、ウイルス由来であることを強くサポートするようなデータを作成することに成功した。以上のように、今年度で新規ウイルス探索のための解析システムの大枠は完成し、実際に動作させることに成功した。更に、その探索範囲を広げるためのモチーフデータベースの構築も行った。本解析により、メタゲノム・メタトランスクリプトームデータから、様々なウイルス同定を同定できる基盤が整備できたと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
今年度が本領域に参加して3年目ということもあり、連携が非常にスムーズに進み、初年度の開始早々から様々なデータにアクセスでき、解析パイプラインの構築もスムーズに進んだ。また、ウイルスの配列からモチーフ同定したものが、新規ウイルス探索にかなり役に立つ可能性が分かり、そちらも注力して行っている。一方で、パラメータ調整などに苦労し、解析できたデータ量はそこまでは多くなかった。
昨年度の結果を受けて、同定できたウイルスについてまとめて、どのような宿主から、どのような手法でライブラリを調整した場合にウイルスが効率的に見つかるのかを探索する。また、ウイルスモチーフデータベースについても共同研究者と検討を重ねて、更に幅広く、かつ偽陽性を減らす努力を行う。それぞれの研究における成果を論文にまとめて報告し、また、今後の新規ウイルス探索のためのデータとして活用しやすい形式でデータベース等の形での公開し、ウイルスの多様性の解明に貢献することを目標とする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Gene
巻: 734 ページ: 144382~144382
10.1016/j.gene.2020.144382
Archives of Virology
巻: 165 ページ: 413-418
10.1007/s00705-019-04480-x
Virus Genes
巻: 55 ページ: 815-824
10.1007/s11262-019-01703-w