研究実績の概要 |
大型長鎖シーケンサー(PromethION)とIllumina Hiseqの両方で初めてヒト唾液由来DNAをショットガンメタゲノム解読したデータ(1サンプル30Gb以上で、ヒト由来DNAの混入率は1%未満)を解析することで、数百のファージを検出した。特にプロファージについて、長鎖リードのデータによってその全長が明らかになり、ホストゲノム上での位置とその周辺構造およびその系統分類が明らかになることを示した。存在量が特に多いファージ・プロファージの中には、口腔連鎖球菌に感染するファージのクラスターや、200kbを超えるジャンボファージが含まれることも明らかになった。それらの多くは薬剤耐性遺伝子の遠縁ホモログをコードしていることや、口腔ファージの遺伝子総数の中でコア遺伝子は僅か0.3%である一方、個人特有のシングルトン遺伝子が86.4%を占めることも明らかになった。さらに、ヒト唾液中のファージが宿主細菌のCRISPRの免疫系を回避していることの示唆や、ヒト由来DNAの混入率が1%未満となる理由まで明らかにすることが出来た(Yahara et al, Nature Communications, 2021)。これと並行して、機序不明だった口腔疾患に注目し、唾液由来DNAのショットガンメタゲノムデータを患者群と健常者群で比較する研究も行い、患者群に有意に高頻度に存在する微生物(Actinomyces)とその遺伝子を同定することも出来た(Yahara et al, PLOS One, 2020)。
|