麻疹ウイルスは、ヒトに感染するモルビリウイルスである。紀元前6世紀頃に牛のモルビリウイルスから進化したと考えられている。モルビリウイルスには、他にイヌジステンパーウイルス、鯨類モルビリウイルス、アザラシモルビリウイルス、牛疫ウイルス、小反芻獣疫ウイルスなどが知られている。モルビリウイルスは、免疫細胞のSLAMと上皮細胞のネクチン4を受容体に用いて感染する。SLAMの動物種間のアミノ酸の相同性はやや低く、このことが、それぞれのモルビリウイルスが固有の宿主動物だけに感染する理由であると考えられてきた。本研究でわれわれは、多くのモルビリウイルスが、イヌSLAM、イルカSLAM、アザラシSLAMなど、異なる動物種のSLAMを効率よく利用できることを示した。一方、ヒトSLAMを効率良く利用できるのは、麻疹ウイルスだけであることを示した。さらに、麻疹ウイルスが、ヒトSLAMのN末の最末端とに特徴的な相互作用を形成することで、ヒトSLAM利用能を高めていることを示した。
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