研究実績の概要 |
自殖に関わる花形質として花粉数に着目し、シロイヌナズナの野生系統を用いたゲノムワイド関連解析から花粉数関連遺伝子Reduced Pollen Number 1 (RDP1) を同定し、機能解析を行った。また、分子集団遺伝学的解析から花粉数が減少する方向への自然選択を検出した。これらの結果をまとめ、論文を出版した(Tsuchimatsu, Kakui et al. 2020 Nature Commun)。rdp1突然変異体と野生型の比較トランスクリプトーム解析を行ったほか、複数の野生アリルの機能を確認した。これらの結果も現在投稿準備中である。 他に自殖に関わる花形質(自殖シンドローム)として、種子サイズに着目した解析を行った。ハミルトン則に基づく理論モデルから、自殖の進化に伴って種子サイズは小さくなると予測されていたものの、実証データはこれまでほとんど得られてなかった。ナス科、キク科、アブラナ科の多数の植物種を用いた回帰分析から、自家和合性種では自家不和合性種よりも全体として種子が小型化することを発見した。この結果を論文にまとめ、現在投稿中である。 ナス科植物の自家不和合性遺伝子座の配列解析から、自殖性の進化の遺伝的基盤を探る研究も進めた。ロングリードシークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析からこれまで発見されていなかった新たなS対立遺伝子候補を自家和合性集団において発見し、今後詳細に遺伝的背景を調べる重要な手がかりを得た。
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