本研究では、植物の性別決定機構解明のさきがけ的な存在となっているカキやキウイフルーツを対象に、植物における独立的な性の成立と可塑化過程を駆動する進化的要因を探索することを目的として、 (1) カキ・キウイフルーツにおける系統特異的な性別獲得過程の解明、(2) 六倍体栽培ガキにおいて成立した花単位の性表現パターンを統御するエピジェネティックスイッチの制御機構の解明、 (3) カキ属における画一的雌雄花からの両性花派生(回帰)のメカニズム解明、(4) 植物における性染色体進化と雄性成立の意義・駆動要因の解明、の4点を目指した。 (1) 六倍体栽培ガキの交雑分離後代および多様な品種群を用いて個体内の花単位における雌雄バランスを決定する遺伝子座候補を同定した。また、栽培ガキ品種の雌雄および両性花派生に特異な共発現ネットワーク解析から、カキの性表現の揺らぎにはストレス応答機構とそれを統御するDkRAD1が中心的な役割を果たしている可能性を明らかにした。 (2) マタタビ属A. arguta二倍体種の全ゲノム解読を行った。マタタビ属における性染色体の構造比較により、性決定二因子以外の周辺遺伝子の保存性は極めて低く、二種に共通した性的二型の発現に該当する性とリンクした遺伝子は見当たらなかった。キウイフルーツにおける性決定遺伝子Shy Girlの遺伝子編集から、マタタビ属における主要な性的二型がShy Girlの多面的効果で成立していることが明らかにされた。 (3) 拡張研究として行っている深層学習の新規活用において、果実内部の障害や種の配置を写真画像から判断するモデル、さらにゲノム配列への深層学習としてcistromeデータからの全転写因子ファミリー認識配列のモデル化と、そのデータ群の深層学習によるcis-decodingモデルの構築に成功した。
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