研究領域 | 植物新種誕生の原理―生殖過程の鍵と鍵穴の分子実態解明を通じて― |
研究課題/領域番号 |
19H04873
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
川勝 泰二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (30435614)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イネ / 種子 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
(1) 胚乳特異的発現遺伝子のDNA脱メチル化に関与する因子の同定:胚乳特異的遺伝子発現にDNA脱メチル化が関与しているかを明らかにするため、胚乳特異的発現遺伝子を「鍵穴」、DNA脱メチル化酵素を「鍵」として、DNA脱メチル化酵素の機能解析を行った。初期胚乳で強く発現するOsROS1aのnull変異体種子は得られないため、CRISPR/Cas9を用いてOsROS1aプロモーター領域にrandom deletionを誘導した形質転換体20系統を作出した。また、ドミナントネガティブ型mOsROS1a過剰発現系統を形質転換中である。また、osros1a null変異体の卵細胞・中央細胞のsingle cell RNA-seqに向け、卵細胞を用いて、single cell RNA-seqの条件検討を行った(領域内共同研究)。 (2) 胚乳特異的発現遺伝子のH3K9me2除去・蓄積に関与する因子の同定:胚乳特異的遺伝子発現にH3K9me2が関与しているかを明らかにするため、胚乳特異的発現遺伝子を「鍵穴」、IBM1様ヒストンH3K9脱メチル化酵素を「鍵」として、JMJ715、JMJ718、JMJ719、JMJ720のノックアウト変異体を作出中である。 (3) 胚乳特異的遺伝子発現を制御する転写因子の結晶構造解析: 種子貯蔵タンパク質遺伝子の胚乳特異的発現に必須のbZIP型転写因子RISBZ1が獲得した胚乳特異的遺伝子発現制御機能の分子進化を解明するために、DAP-seqにより30個のイネbZIP型転写因子がゲノム上に結合する領域を同定し、非常に弱いながら、GCN4モチーフを含む領域に結合する4個のbZIP型転写因子を特定した。現在RISBZ1とこれらのbZIP型転写因子の共通性について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通り、OsROS1aプロモーターにランダムデリーションを誘導した形質転換体を独立に20系統獲得することができた。この際、デリーションが起きていなくてもプロモーター断片のシャッフルが起きることも明らかとした。このことはCRISPR/Cas9でゲノムを切断することでhomology independent targetingを誘導できる可能性を示唆している。 一方でJMJ719、JMJ720のノックアウト形質転換体が稔実せず、再度形質転換を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作出している形質転換体のエピゲノム解析を開始する。また、DNAメチル化はカルスで活性化されるため、カルスを材料としたChIP-seqによってDNAメチル化制御機構の解析を実施する。
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