1. 胚乳特異的発現遺伝子のDNAメチル化・脱メチル化に関与する因子の同定 胚乳特異的発現遺伝子の、胚乳以外の組織におけるCHGメチル化はDDM1経路によって制御される。ゲノム編集によって作出したDDM1経路で機能するDNAメチル化酵素CMT2およびCMT3の機能欠損変異体のメチローム解析から、胚乳特異的発現遺伝子(鍵穴)はCMT3(鍵)によって胚乳以外の組織でCHGメチル化を受けることを示した。また、シロイヌナズナのCMT2はCHGメチル化も制御するが、イネCMT2はほとんどCHGメチル化に関与しないこと、RdDM経路とDDM1経路のCMT2およびCMT3が拮抗してCHHメチル化を制御することを発見した。 2. 胚乳特異的発現遺伝子のH3K9me2除去・蓄積に関与する因子の同定 胚乳特異的遺伝子発現にH3K9me2が関与しているかを明らかにするため、胚乳特異的発現遺伝子を「鍵穴」、IBM1様ヒストンH3K9脱メチル化酵素を「鍵」として、JMJ715、JMJ718、JMJ719、JMJ720のノックアウト変異体を作出した。ChIP-seqの結果、jmj715およびjmj718では、H3K9me2もH3K4me1も変化しておらず、これらの因子では機能が冗長的であることが示唆された。 3. 胚乳特異的遺伝子発現を制御する転写因子の解析 種子貯蔵タンパク質遺伝子(鍵穴)の主要な制御因子(鍵)であるRISBZ1に加えて、小胞体ストレス応答のキー転写因子であるOsbZIP39およびOsbZIP60(合鍵)が胚乳特異的発現に必須のGCN4モチーフに結合することを発見した。小胞体ストレスによって種子貯蔵タンパク質遺伝子発現は抑制されるため、RISBZ1とOsbZIP39およびOsbZIP60が拮抗的に種子貯蔵タンパク質遺伝子発現を制御していることが示唆された。
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