公募研究
他人に助けを求める行動は、ヒトが社会的動物として生きる上で根本的に重要な行動である。この行動にも個体差があり、援助希求行動は価値観の影響を受けている。特に本邦では、精神的不調に対する援助希求の乏しさが際立っており、「援助希求力」の向上は国家的な重要課題である。本研究は、思春期において主体価値とともに「援助希求態力」が形成される過程を明らかにすることを目的としている。2019年度は、中間データを用いて、思春期に援助希求態度は親子伝達するのか、を検証するプレ解析を行った。研究代表者が立ち上げから関与している地域代表思春期コホート「東京ティーンコホート」のデータを用いた。援助希求意図は、児童および主養育者のそれぞれに、うつ病のヴィネットを提示し、自身が同じような状態になったら誰かに相談するかを2件法で尋ねた。プレ解析の結果は以下の通りであった。親子の援助希求意図は、10歳・12歳の両時点で相関しており、相関係数は12歳時点において、より高かった。10歳時点の子の援助希求意図は、12歳時点の親の援助希求意図と相関しなかった。一方で、10歳時点の親の援助希求意図は、12歳時点の子の援助希求意図と相関していた。10歳時点より12歳時点の方が親子の価値共有化が進む可能性が示唆された。また、親から子に伝達する方向で価値共有化が進む可能性が示唆された。今後は、東京ティーンコホートの追跡データ収集およびデータクリーニングを進めていく。追跡データを用いた縦断的解析により、児童および主養育者の援助希求態度の縦断的関係について検討する。また、「他人に迷惑をかけないこと」などの価値を含む主体価値と援助希求態度の関係についても検証を行なう。さらに、性役割についての主体価値と援助希求態度の関係についても検討を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、思春期において主体価値とともに「援助希求態力」が形成される過程を明らかにすることを目的としている。2019年度は、思春期に援助希求態度は親子伝達するのか、を検証するため、収集した中間データを用いたプレ解析を行なった。研究対象は、研究代表者が立ち上げから関与している地域代表思春期コホート「東京ティーンコホート」の参加者であり、今回のプレ解析には、10歳時点の第一期調査、12歳時点の第二期調査、13歳時点の来所型調査のデータを用いた。援助希求意図は、児童および主養育者のそれぞれに、うつ病のヴィネットを提示し、自身が同じような状態になったら誰かに相談するかを2件法で尋ねた。プレ解析の結果は以下の通りであった。親子の援助希求意図は、10歳・12歳の両時点で相関しており、相関係数は12歳時点において、より高値だった。第一期調査の子の援助希求意図は、第二期調査の親の援助希求意図と相関しなかった。一方で、第一期調査の親の援助希求意図は、第二期調査の子の援助希求意図と相関していた。このことから、10歳時点より12歳時点の方が親子の価値共有化が進む可能性が示唆された。また、親から子に伝達する方向で価値共有化が進む可能性が示唆された。
今後は、東京ティーンコホートの追跡データ収集およびデータクリーニングを進めていく。追跡データを用いた縦断的解析を行うことにより、児童および主養育者の援助希求態度の長期的な縦断的関係について検証を進めていく。また、「他人に迷惑をかけないこと」などの価値を含む主体価値と援助希求態度の関係についても検証を行なう。主体価値について提示した文章への回答を元に、主養育者と児童の主体価値を評価する。特に、主養育者の主体価値と児童の援助希求態度の関係について注目した解析を進めていく。さらに、性役割についての主体価値と援助希求態度の関係についても検討を行なう。「男の子/女の子は、困ったことがあっても誰にも相談しないで一人で解決するべきだ」「息子にはキャリア志向の女性と結婚して欲しい」といった主体価値に関する文章への回答を元に、主養育者と児童の性役割についての主体価値を評価する。特に、主養育者のもつ性役割の社会規範に関する主体価値と児童の援助希求態度の関係に着目して縦断データ解析を進めていく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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